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ぼーっとしている間に、いつの間にか日は暗くなっていた。
「......賢斗」
「ん?ああ、起きたのか」
「......うん」
気づけば、修弥が部屋から出てきて、入り口に立っている。
暗くてよく見えないけど、きっと冴えない顔をしているのだろうと、声から分かった。
「なんか飲むか?今電気つけて......」
「や......」
「ん?」
「このまま......そっち行って良い......?」
修弥がこんなにしおらしいなんて珍しい。
それほど、さっきは不快にさせてしまったのだろうか。
「ああ」
そう返事をすれば、修弥は重たげに近寄ってくる。
横に来た修弥の頭を撫でて、俺はさっきの謝罪をするべく口を開いた。
「なあ。さっきはわるかっ......」
「ごめん」
「え?」
いきなり謝られて、どうしていいのか戸惑る。
明らかに、謝らなければならないのは俺の方だろう。
「.......今日、せっかく色々してくれたのに。一方的に怒って.......」
「いや、俺が悪かった。あんな強引にされたら嫌だよな」
「違う。違くて.......」
「修弥?」
修弥の様子がおかしくて、俺は名前を呼ぶ。
すると、修弥は恐る恐ると言った感じに、口を開く。
「.......賢斗が出来ることで、俺に出来ないことがあるのは嫌だ.......それに、賢斗が知ってることで、俺が知らないことがあるのも嫌だった」
薄っすらと見える口元は、かすかに震えていた。
「俺が分からない賢斗がいるのが怖くて.......置いてかれそうで、怖かった」
「馬鹿。......置いて行くわけないだろ」
抱きしめてそう言った言葉は、自分に言い聞かせるためのものでもあった。
「修弥」
気を取り直すように、ポケットから出したものを修弥に渡す。
「これ......鍵?」
この別荘の鍵だ。
「俺に会いたくなったら、いつでもここに来い」
「は?何言って......一緒に住んでるのに」
「まあ、一応。なんか合鍵って憧れるだろ?」
「なんだよそれ」
頭を傾げる修弥を撫でる。
今は分からなくて良い。
だって、言ったらきっと修弥は泣いてしまうから。
せっかくの誕生日にそれは嫌だった。
「それとこれも」
するっと修弥の指にそれを通せば、修弥は驚いたように目を見開いた。
「......っ。賢斗、これっ」
「誕生日おめでとう、修弥」
手を取って、渡したリングにキスを落とせば、修弥が鼻をすすった。
......結局、泣かせちまったな。
「修弥。絶対、結婚しような」
「何言ってるんだよ。俺たち男同士......」
「そのうち男同士でもよくなるんじゃねえの?まあ、駄目だったら海外行けば良いし」
「......ばか」
悪態をついた後に「ありがと」と小さく付け加えた修弥が愛おしくて、更に抱きしめた。
凌真が覚悟を決めた以上、俺も覚悟を決めなければならない。
きっと、両親に本当のことを言っても、はいそうですかなんて簡単には行かないだろう。
けど、俺は修弥と一生一緒に居たい。
だから、そのために少しだけ待っていて欲しい。
その間修弥を守ってくれと、そのリングに願いを込めた。
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