アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
159
-
*
修弥様に毎日のようにクビと言われながらも、お仕えして二年が経った頃。
小学校からおかえりになった修弥様が、一目散に私のところへと駆けて来る。
「鳴上!これを見ろ!!!」
「そちらは......なんでしょう?」
画用紙を目の前で開かれ、見せられる。
描いてある絵がずいぶんと特徴的で、しかし何かは分からない。
顔......なのだろうか。それさえも怪しい。
「お前の目はふしあなか!これはしょうしんしょうめい、お前の顔だ!!」
「私の.....ですか?」
「そうだ!賢斗がかいがコンクールで賞をもらってて、かっこよかったから、俺もかいた!」
賢斗様。
修弥様の一つ上の幼なじみで、修弥様の憧れの的。
そんな賢斗様の真似をしてばかりの修弥様は、今回はどうやら絵を描いたらしい。
「恐縮ですが......何故、私なのですか?」
「家族ってテーマで、賢斗は凌真を描いたんだ。俺はきょうだいいないけど、一番近いのは鳴上だから」
「......」
「なんだよ!不服か?」
「いえ.....ただ、実の兄弟とはあまり仲が良くないので」
「なんで?賢斗と凌真はなかいいぞ?」
「......私は家の恥さらしですから」
8歳の子供に何を言っているのかと呆れるけれど、それでも言わずにはいられなかった。
二年も続いた家はここが初めてで 、大抵は三日で駄目になった。
そんな俺を見る両親と兄弟の目は、なんて恐ろしかったことだろう。
自分の存在価値さえ否定されているようで、気が気でなかった。
「よくわかんなけど......そいつら見る目ないな。鳴上はゆうのうなのに」
「はい......?」
「母さんも父さんも鳴上のことほめてる。俺だってあんまりほめられないのに!あの人たちが人をほめるのって珍しいんだからな!」
顔を真っ赤にした修弥様が、必死に言葉を紡ぐ。
「それに、俺も鳴上のこと嫌いじゃないし......いや、ムカつくけど!ムカつくけど、嫌いじゃない......!」
「修弥様......」
「だ、だから、お前は一生俺のそばで仕えたら良い!」
毎日クビだと怒鳴り散らす張本人が何を言っているのかとか、案の定その後も何度もクビを言い渡されたのだけどとか、いろいろ思うところはあるけれど、その言葉がものすごく嬉しかった。救われた気がした。
由緒正しい家柄とか、成金だとか関係ない。
その瞬間、確かに、修弥様は“ただの主人”から“大切な人”に変わったのだ。
だから私は、修弥様が一生幸せでいられるためなら、どんなことでもすると、そう心で誓った。
それが私の存在を認めてくれた、修弥様への恩返し。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
159 / 185