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あの後、鳴上さんと凌真が病室に来て、修弥は鳴上さんと帰っていった。
今、部屋には凌真と二人きり。
「どうせなら引き寄せて抱きしめれば良いのに、一緒に落ちるとか、ほんとダサいよねー。しかも六年前も同じことしてたし」
「うるせ」
相変わらず兄に対してきつい凌真が呆れ顔をする。
本当にその通りで情けないと思うけどよ......。
「......上手くいかねぇな。待ちたいって思ってるのに、抱きしめて俺だけのもんにしたくなる。でもやっぱり、あいつの気持ちも大事にしたいって思うし......ほんと上手くいかねえ」
修弥が鳴上さんのことを好きだと言おうとしたとき、黒い感情が込み上げるのを感じた。それだけは言わせたくなくて、俺はほぼ無意識に動いていた。
自分を抑えるのがこんなも辛くて、難しい。
「良いんじゃない。そういうもんでしょ」
何か含んだ様子でそう言ったかと思うと、今度は何か思い出したように俺を見る。
「あ。父さん、心配してたよ」
「なんだ、もう居場所ばれたのか」
「そりゃあね。すぐ見つかるよ。けど、もう追わないって。兄貴が立ち上げた事業も、全部兄貴のもので良いって言ってた」
「あ?家のために一事業成功させる代わりに、自由になって良いって話だっただろ?」
その後も長々引き止めるから無理やり逃げてきたのに、どんな風の吹き回しなのか。
「父さんもそこまで鬼じゃないてことだよ。手持ちの現金だけで日本に帰るなんて、兄貴の本気度が分かったんじゃない」
「......ふーん」
まあ、これで自由になれるならありがたいが、やっぱり凌真には申し訳ないことをしている。俺が抜けたしわ寄せは全部凌真にいくんだから。
「世話かけて悪いな」
「別にー。元々は俺が継ぎたいっていったんだし」
「それでも、ありがとな」
そう言うと、凌真は気怠げに「どういたしましてー」と言った。いつもの凌真に安心したのもつかの間、俺の弟はやはり兄の心を抉るのが好きらしい。
「ま、これで修弥と一緒になれなかったら、兄貴はただの寂しい孤独人間だけどねー」
「お前......怖いこと言うなよ......」
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