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暴君の失態12
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車の中、隣ですやすやと眠る小鳥を眺め、尊は深いため息をついた。
めったに怒ることのない小鳥が家出をするまで腹をたてるなんて、一体自分は何をやらかしたのか。
小鳥が怒っている理由が分かっているらしいアクアの尊への対応は厳しく、昨日はいくら交渉しても小鳥に会わせてくれなかった。
小鳥からは“明日帰る”とlineが来たが、この調子ではそれが実現するかどうか怪しいと感じ、早急に手を打つことにした。
とにかく早く小鳥を手元に取り戻したかった尊は、アクアの母親を味方につけたのだ。
気に入られているのを良いことに、アクアの母親からガードマンに話を通してもらい、早朝こっそり小鳥をアクアの家から奪還した。
眠ったままの小鳥をアクア達にも何も言わずに連れ出してきたので、後々盛大に責められそうだ。
家に着いても、小鳥は眠ったままだった。駐車場に車を停めて、小鳥を横抱きにする。
幸と殿下も一緒に連れ帰ったのだが、小鳥を抱えて両手が塞がっているので今は運べそうにない。
後でまた迎えにくることにして、いったん二人で部屋に戻った。
自分の部屋のベットに小鳥を寝かし、すぐに駐車場へと引き返す。
幸と殿下を連れて部屋に帰ってきても、小鳥は変わらず穏やかに寝息をたてていた。
何故か小鳥は羊の着ぐるみパジャマを来ていて、無防備に眠る姿はいつもより2割増に愛らしい。
小鳥の頭を撫で、慣れ親しんだふわふわの髪の手触りに癒されつつ、これからの事を考える。
今一番の問題は、小鳥を怒らせた原因が分からない事だ。
尊はてっきり、酔っぱらった自分が何か迂闊な言動をとり、ここ最近のただれた性生活が小鳥にばれたのだと考えていた。
けれど昨日助と話し、その線はなくなった。
助いわく、尊の夜遊びについて、小鳥はずいぶん前から何もかも気づいていたらしい。
前から知っていたのなら、その事が原因で突然怒るというのも不自然だ。
眠る小鳥の真っ白な頬に、優しく触れる。
「起きたらまた怒ってもいいけど、もう家出はするなよ。」
そんな一人言をもらしていると、携帯のバイブが振動した。
画面を確認すると助からの着信で、尊は通話ボタンを押す。
「こんな早朝から何の用だよ?」
『用なんて、小鳥の事に決まってるだろ。怒ってる原因分かったのか?』
「いや、まだだ。」
『そんなんでちゃんと小鳥を連れ戻せるのかよ。今日迎えに行くんだろ?』
「それは大丈夫だ。もう小鳥は家に連れて帰ってきた。」
『はぁ!?』
小鳥を連れ帰った経緯を説明すると、無断で連れ出すなんて何考えてるんだとしばらく助の説教が続いたが、尊は携帯を耳から遠ざけ我関せずを通す。
『おい!聞いてるのか尊!』
「聞いてないな。」
『…ッもういい。とりあえず、ちゃんと小鳥と和解しろよ。にしても、ホントお前何したんだろうな…あの晩の小鳥はいつもより機嫌良いくらいだったのに。』
「…どういう事だ?」
助とは昨日も色々話したが、問題があったあの晩、小鳥の機嫌が良かったなんて話は今初めて聞いた。
泥酔して帰ったのだから、むしろ機嫌を悪くしそうなのにと不思議に思う。
『少なくとも、俺がお前を送ってった時、小鳥は嬉しそうにしてたぞ。俺も努力したかいがあったってもんだ。』
「何でお前が偉そうなんだよ。」
今の助の話ぶりでは、小鳥の機嫌が良かった事がまるで自分の手柄のようだ。
『何でって、あの晩は俺がお前の夜遊びを防いだからな。毎晩のよーに相手とっかえひっかえしてた誰かさんが、あの日は健全に過ごしたのが小鳥は嬉しかったんだろ。』
一瞬、助の言葉が理解できず思考が固まった。
「ちょっと待て、今、何て言った?」
『だから、小鳥はあの日お前が健全に過ごしたから機嫌が良かったって…』
「いや、俺あの晩も声掛けてきた男と寝た記憶があるけど。」
曖昧だが、確かにその記憶はある。助の話とつじつまが会わない自分の記憶に尊は首を捻った。
『確かに声は掛けられてたけど、途中で俺がお前を回収したから未遂だ。』
助に回収されたのは事を終えた後だと思っていたが、どうやら違うらしい。
あの男と寝ていないのなら、やたらと鮮明に覚えている真っ白で柔らかな肌の感触や甘い声は、全て夢ったのだろうか。
何かすっきりしない。妙な違和感をおぼえたところで、小鳥がもぞもぞと動き出した。
「小鳥が起きそうだ。とりあえず切るぞ。」
助の応答も待たず、通話終了ボタンを押して携帯をしまう。
色素の薄い長いまつげが揺れて、ゆっくりと小鳥が目を開けた。
雀色の大きな瞳がぼんやりと宙を眺めたあと、尊の方を見る。
しばしぼーっと固まる小鳥。コテリと首をかしげ、その数秒後にハッとしたように目を見開いた。
「おはよう小鳥。」
「…おはよう。どうして、尊が居るんだ?」
「そりゃ、ここは家だし。」
「…どうして、俺は家に居るんだ?」
「小鳥が寝てる間に、俺がアクアちゃんの家から連れて帰ってきたからだな。」
「…そうか。」
普通こういう状況であれば、もう少し驚くなり、戸惑うなりするものだと思う。
けれど、ちょっとやそっとの事で動じない小鳥は、いつものぼんやり無表情で黙ってしまった。
うだうだ悩むのは、尊の性に合わない。
早速ではあるが、本題を切り出す。
「小鳥、昨日の事だけどな…」
そこまで口にして、尊の言葉は途切れた。小鳥が両手のひらを尊の口に押し付け、先を遮ったのだ。
「…もう、いい。」
「いや、よくないだろ。」
そっと口に当てられた小鳥の手を外し、その手をそのまま引っ張ってもこもこの羊のパジャマに包まれた小鳥を近くに寄せる。
向かい合う体勢で自分の膝の上に小鳥を乗せ、尊は改めて口を開いた。
「俺はお前を怒らせるような事したんだろ?だったらちゃんと理由を理解したうえで謝りたい。」
「…俺は、謝って、欲しくない。」
「じゃあどうすりゃいいんだ?俺は小鳥と仲直りしたいんだけど。」
素直な気持ちを吐き出し、額同士をコツンとくっつける。至近距離で雀色の瞳を覗き込むと、小鳥が軽くため息をついた。
「謝罪はいらない。」
「うん。」
「けど…」
「うん?」
小鳥の細い指先が、尊のシャツをギュッと握りしめた。
「…尊から、キスして欲しい。」
「……。」
「そしたら、…全部、許す。」
上目遣いで、ポツリ、ポツリと・・・・・けれど、しっかりと発せられた小鳥の言葉に、しばらく何の返事もできなかった。
小鳥とは何度もキスをしたが、尊から進んで小鳥にしたことは一度もない。
小鳥は尊が恋愛対象として好きだと言っている。しかし尊はその気持ちを認めてはいないし、小鳥の気持ちに応えるつもりもない。
それならば、尊からキスなどするべきではないだろう。
けれど何故か、今小鳥のこの頼みを断ってはいけない気がした。
何故かは分からない。けれど、真っ直ぐ見つめられ、どうしようもなくそんな気がした。
「わかった。」
意を決して告げれば、小鳥がそっと目を閉じた。
透き通るように白い頬に手を添えて、触れるだけのキスをする。
重ねた唇は柔らかくて、心地良い温もりが伝わってきた。
小鳥の柔らかい猫っ毛に指を差し込み髪をすくと、ふわりと何時もとは違うシャンプーの香りが漂う。
アクアの家に泊まったからだと分かってはいても、何やら胸がざわついた。
何時もは、自分と同じ香りなのに…と。
唇を離し、自分の匂いを移すように小鳥をすっぽりと抱き込んだ。
けれど小鳥は尊の胸に手をつき、すぐに体を離してしまった。
「何だよ小鳥。やっぱまだ怒ってるのか?」
「…違う。」
「じゃあどうした?」
「キスが…違う。俺がして欲しいやつじゃない。」
キスならさっき確かにした。けれど、小鳥はお気に召さなかったらしい。
「違うって、何が?」
「俺がしたいのは、もっとすごい方のキスだ。舌をクチュクチュするやつ。」
「…はぁ!?」
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