アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
(4)
-
「お待たせしました」
ウェイターが食事を運んできた
それぞれ頼んだ食事が並び、では食べようと手をつけようとしたクリアはふと気づいた
「…ツバサも生徒会役員になるということは、仲間になるってことだよな…?」
ぴたりとマオとクウリの動きが止まる
ツバサは不思議そうに首を傾げた
「そうなるなぁ?」
「そっか……そっかぁ〜」
何かを噛み締めるかのように言うと、ツバサににっこり笑いかけた
花開くような笑顔でも、天使の笑顔でもない、ただただ嬉しそうな笑顔にウッとツバサは目を抑える
なんやこの笑顔は!?可愛すぎて見てられないっ!!
「そういえば友達になろうって言ってたよな。…なろうか」
「え!?ほんま!?」
「うん!よろしくな?」
「よろしゅーに!」
笑い合う2人を見て、マオはあーあと呟く
「何も知らないで嬉しそうに…」
「…とも…だち…??……へぇ…」
ふと隣を見ると、クウリが不穏なオーラを出しかけていた
なので頭をぱしりと叩く
「やめろ。友達と家族は違う。変な独占欲で暴走したりするなよ」
「………はーい」
父親代わりであったマオに叱られてしまい、不貞腐れながらも頷く
なんだかんや言いながらもワイワイと4人は楽しく昼食を食べながら親睦を深めていった
しかし楽しい時間は必ず終わりがやってくる…
食後のデザートを食べている時に彼等はやってきた
「あーーー!!何でこんな所にいるんだよっ!!」
その大声に、クリア達は思わず眉を顰める
ちょっと耳がキーンッとした
「せっかく俺が誘ってやろうと思って迎えに行ったのにっっ!!!駄目じゃないか!探したんだぞ!?!?」
モジャモジャのどこからどうみても地毛じゃないだろうと突っ込みたくなる鬘と、何を見ようとしているのか聞きたくなるほどに分厚いレンズの眼鏡を付けた少年が此方に向かって歩いてくる
「酷いよねぇ〜。せっかくリウが、かいちょー達に気を遣ったってのに〜」
「そうですね。リウの好意を無碍にして、何をしてるかと思ったら新入生を2人もラウンジに連れ込むとは…」
「「リウ、かわいそー」」
後ろからぞろぞろとやって来たイケメンと呼ばれる類の人族に、ツバサは顔を青くしマオとクウリを見る
何故なら彼等は、転入生に入れ込み仕事をほっぽり出している生徒会役員だからだ
因みに声をかけて来た順番に紹介すると、転入生、会計、副会長、双子の庶務である
これは一触即発の大ピンチか!?
…とツバサは思ったのだが、マオとクウリはどうでも良さそうに一目見ただけで、それぞれ頼んだデザートに手をつけ始めた
確かにマオは彼等をどうでもいいと、仲間ではないと言ってはいたが…喧嘩を売ってきたのに対してこの反応は、当事者ではないのにかなりくるものがある
見ると案の定、役員達は悔しそうな表情を浮かべていた
少し可哀想やな…と思っていたツバサは、ついと袖を引かれ隣を見る
クリアはケーキを口に含みキラキラと目を輝かせていた
「…え、そんな美味いんか?」
コクコク
(頷きながら自分のケーキを差し出す)
「…えぇーと……」
(転入生達を気にしつつも一口食べる)
「うわ!?ほんまや!!うっまぁ〜!!!」
ケーキを口にした瞬間、ツバサの頭からも転入生達の存在が消えた
ツバサまでデザートに夢中になり、再び4人でワイワイし始める
全員に無視され、唇を噛み締める役員達…
しかしそんな4人を止めたのは転入生だった
転入生はドンとテーブルに手を付き、怒鳴る
「何で俺達を無視するんだよ!?俺知ってるぞ!!イジメだろう!!!なんでそんな酷いことするんだよ!!!お菓子なんか食べてないでこっち見ろよっっ!!!」
ガッチャッン!!!
腕でテーブルに乗っていた皿を押し退け、床に払い落とした
先程まで舌鼓をうっていたデザートは皿の破片とごちゃ混ぜになって床に落ちてしまう
沈黙が場を支配した…
ふと見ると、待機していたウェイターまでもが一部始終を目撃し固まっている
この学園で美味しい料理を提供できることは、料理人の誇りである
しかしそれは給仕も一緒
美味しいと言いながら英気を養う生徒達の姿を見て、誇りを感じていた筈
それなのに、全て落とされ食べれなくされてしまったわけで…
ショックを受けた少し泣きそうな顔が、やったわけでもないツバサの罪悪感を刺激した
しかしやった張本人は反省するどころか、やっとこっちを見たと満足げな表情を浮かべている
………いやいやマジか?
「これは噂以上やわぁ…」
呆然と呟くツバサにクリアは同意する
転入生の破天荒さは聞いてはいたが、ここまでとは…
「そういえば、この2人はなんなんだよ!?その赤髪の奴は…かっこいいけどさ!此処に連れてきちゃ駄目なんだぞ!なんたって此処は役員専用のバルコニーだからなっ!!」
「んじゃあ問題ないな。この2人は補佐につく新しい仲間だ」
どうでも良さそうに言ってのけるマオに、さすがの転入生も固まった
「…え?」
「「「「はあぁ!?!?」」」」
今まで黙っていた役員達がそれを聞いて騒ぎ出す
「どういうことですか!?私達は聞いてませんよ!?それに、補佐につけるのは2人のみ…。これではリウが補佐になれないじゃないですか!!」
副会長の言葉に、慌てて双子の庶務がリウにぎゅっと抱きつく
「そ、そんなのダメだよ!」
「そうだよ!リウは僕達とずっと一緒なんだからっ!」
「…かいちょー。僕達がどんなに言ってもー、補佐は必要ない!の一点張りだったくせに…一体どういう風の吹き回しー?」
会計の非難めいた視線に苛立ちながらもマオは答える
「理事長の推薦だ」
「え!?りじちょー!?」
「推薦って…まさか…」
怒りに震えながら副会長はマオを睨み付ける
「貴方…父親である理事長に頼んで、2人を補佐にしてもらいましたねっ!?卑きょ-〈バンッ!!!〉ひぃっ!?!?」
テーブルを殴りつけたマオは、ふわりと怯えた副会長に笑いかける
「…お前、この〝俺〟が、そんな事をすると思うのか?だとしたら、お前、おちたな」
「なっ…!?」
マオと副会長が睨み合う
そんな2人を見守っていたクリアは、ふと床に落ちたケーキに目を止めた
すごく美味しかったのに…勿体ない…
はぁ…と溜め息が溢れる
『大丈夫?』
そんなクリアを心配し姿を現す妖精達にフッと微笑んだ
『大丈夫だよ』
『愛し子…無理しなくていいよ』
『そうだよ!愛し子のケーキをわざと落とすなんて…。あの人族きらーい』
『私もーー!!』
『ねぇねぇ!こんな人族は、僕達がいっぱい遊んであげようよ!』
ぷんぷんと自分のことのように怒り出す妖精達が可愛くて、口元が綻んでしまう
その時、ふと一つの案が頭に浮かんだ
『じゃあ…遊んでやろうか』
騒いでいた妖精達は一瞬で静かになり、期待を込めた目でクリアを見た
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 41