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基盤が優しい彼はいくら悪態をついたってその優しさを隠せずに俺からは丸見えだった。
上手く気を使える子だし、周りからの信頼はある。
だけど真面目な性格故にか‥ため込む癖があり、それを発散させる方法を上手く見つけられてないようで、両親が亡くなって以降‥定期的に俺の腕の中で涙を流した。
もちろん両親が亡くなる前の事は知らないけど、思春期、反抗期、色々あるが高校生になりたての彼は心も体も成熟してはおらず、溜まりに溜まってから流す涙はいつも消えてしまいそうな程‥永久を儚く脆く見せた。
心を隠してしまう彼を守りたかった。どんな時も彼を側で感じていたかった。
ありがとうとごめんなさいを素直に伝える事が出来る純粋な彼の全てを、抱き締めたかった。
自分の我が儘だと分かった上で‥それでも諦めようと思った事は無い。
反対に‥彼が俺をただの踏み台にしか見ていなくて、大丈夫になった時いつか離れてしまっても‥それでも良いと思った。
永久の心に少しでも寄り添えたらと‥幸せを願っ‥‥
いや、そんなの嘘だ。
思ってなんかない。
そこまで出来た人間じゃないんだ。
稔さんと名前を呼ばれる度‥抱き締めてキスをしたい衝動と戦った。
永久が終わりにしようと離れた時は、本当に‥狂いそうな程心が乱れた。
だから‥
俺の側に帰って来てくれただけで充分だったんだ。
「‥」
永久が‥
俺の事を稔さんと呼び、伏せた睫毛の奥に揺らめくふわりとした微笑みと
学校で先生と呼んだ時の冷酷な視線の違いに気付いてから‥
もしかしたらなんて‥期待をしたのも事実だったけど、それも言わば願いのような域を脱する程の自信もなく。
『稔さんが‥好きだからっ』
「っ」
飲み干したアルミ缶を握り潰し、俯いていた顔を上げる。
「‥」
缶をゴミ箱に投げ捨てて寝室までの数メートルを歩きドアを開ける。
無性に顔が見たくなった
ビールを飲んで気持ちを鎮めてる場合じゃなかった
早く抱き締めたくて大きくなる歩幅
「‥」
ベッドへ腰掛けると自分の体重分だけ沈んだ
「‥‥」
すやすやと‥いつもは誰も居ないベッドに永久が縮こまって寝ている。
たまらなく‥込み上げる
この気持ちを‥
「‥永久」
「‥」
綺麗な寝顔を滑るように撫でる
「‥‥永久」
「‥ん‥」
薄く開いた目蓋の奥で濡れた瞳が少しだけ光った
「ん‥稔さん‥?」
「うん、ごめん起こして。‥キスしていい?」
まだ半分寝ている顔が俺を捉えて嬉しそうに、はにかんだ。
「ん‥して、ください‥」
「‥」
聞き取りにくい寝起きの掠れた声にすら満たされていく。
そっと永久の向こう側に手を突き覆い被さって距離を詰める。
額と鼻先をくっつけて目を閉じた。
「‥稔‥さん?」
「‥」
「どうか‥した?」
閉じた目を開ければ視界いっぱいに見える永久の目元。
「いや‥キスしたら俺も寝る」
「ん‥っ」
ゆっくり優しく、けれど激しい‥甘くて長い‥口付けを‥
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