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優しさ
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翌日、露朱は店主である緒香に話がしたいと言い、時間を作ってもらった。
緒香は露朱の珍しい申し出に快く応じた。
「外出許可?」
二人は緒香の部屋で話をしていた。
「うちは外出禁止じゃないし、全く問題ないよ。露朱も知ってるだろ」
「一人でじゃなくて、筑紫と一緒に出かけたいんだ」
露朱の言葉を聞き、そういうことかと緒香は納得した。
客と店の外で会うことは、この白椿では禁止されている行為だ。本来であれば許諾することはできない。
「お客さんとの外出は、禁止行為だねえ」
緒香がそう言うと、露朱はやはりだめかと顔をうつむかせた。
「でもまあ、“友人と出かける”んだったら、駄目とは言えないかねえ」
露朱ははっと顔を上げた。
「筑紫っていうのは、露朱の友人かい?」
そう問われて反射的にうなずく露朱を見て、緒香はほほえんだ。
どういった心境の変化があったかは分からないが、緒香は良い傾向だと思った。
長年この露朱という人物を見てきた緒香でも、彼が他人に興味を示すのを見たのはこれが初めてだった。
最近露朱をよく指名している筑紫という青年は、ごく普通の大人しい青年に見えたが、何が人の心を動かすかなんておそらく当人にも分からない。
この仕事しかできない、と言った露朱の心境に、少しでも良い変化があればいいと緒香は思った。
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