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target5-5.障害物競走
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それぞれの出場種目が大体終わり、残すは借り物競争と100メートルリレーだけとなった。
準備を促すアナウンスがされ、出番だが昶は夏バテで椅子に座ってうなだれたままだ。
「うあー…ダル、京弥代わって」
だらしのない姿をじっと見ていた京弥は、無言のまま昶の頭を叩いた。
スパーンという音さえ聞こえそうな鮮やかさで。
「だらけていないで、さっさと準備しなさい」
「……ちぇ~…」
冷たい目線を受け、昶は漸く重い身体を起こした。
鬼畜眼鏡は人の血が通ってないから分からないんだ、とボヤいてまた叩かれていたが。
そこに琉生が現れ、手招いて呼び出す。
「五十嵐」
「…何だよ」
毎度の事ながらいい予感はせずに近付く。
「突然で悪いんだが…借り物競争に出る予定だったやつが欠席でな。普段から授業にもあまり出ないから面識はないと思うが…代わりに頼めるか」
矢張りか。ため息を吐く。
「何で俺なんですか」
「そりゃあ、五十嵐が運動神経抜群なのを見込んでだなぁ…」
琉生お得意の笑顔。
それが嘘偽りがない笑顔だからこそ、質が悪い。
「…別に、遣っても良い」
というか、遣るしかない。
「そうか~!サンキューな、五十嵐!」
「止、めろって…!」
抱き込むようにして颯都の髪を掻き撫でる琉生に、全員の冷ややかな視線が注がれる。
それに気付いた琉生は手を離し、からかうように笑う。
「何だぁ~?五十嵐、モテモテだなぁ」
「はぁ?意味分かんねー」
「あとな、一つアタリ入れといったから」
言葉の意味が解らずに、眉を顰める。
「さ、行こっか颯都」
「っ、おい!」
いつの間にか切り替えの早い昶が手を掴み、反論する前に颯都を連れ出した。
何かと絡んでくる昶のちょっかいを適当に流し、競技の列に並ぶ。
「あ、あんた……えと、みさわ?」
「掠りもしてねぇけどな。五十嵐颯都だ」
「ふぅん。てかあんた、他のにも出てなかった?」
「まぁな」
「出たがりなのか?」
「違ぇよ」
横に並んでいた郁とそんな会話をしている内に出番を迎える。
走る前の体勢を取って、チラリとテントの方を横目で見ると、親指を立ててウィンクをしてきた。
「(絶対碌なアタリじゃねぇよな…)」
琉生の言葉を思い返しスタート。
机に置いてある封筒から小さな紙切れを取り出しそれぞれ広げる。
「は…?」
「えぇー、ないわー」
「ムリムリ!」
真っ先に走り出した颯都が向かった先は委員会のテント前。
「…行くぞ」
仕方無しに、琉生に手を差し伸べる。
にやついた笑みが了承し、手を取ると一気に歓声が膨れ上がった。
様々な意味合いでの嫉妬の視線が送られてくるのを背に、ゴールに向かって走り出す。
「なっ!アタリだったろ?」
「何処がだよ」
余裕の一位だった。
一位のポールがある草村に座り、寛いだ格好で他の参加者の様子を見ると。
「うわっ…汗と脂でギットギトなんだけど!触りたくな~!」
教頭のカツラを入手するが、持つのを拒否する昶と。
「イヤだっ!ムリムリムリ、絶ッッ対ムリ!!!」
蜘蛛の巣を前にして青ざめ、首を千切れそうなくらい横に振っている郁。
昶の紙には「ひた隠しにしているもの」
郁の紙には「世界一キライなもの」
と書かれていた。
「他のよりマシだろ?」
「だからって、此は無いだろ…」
「何が書かれていたんだ?」
最後の競技、リレーの前。
璃空が颯都に近付き、顔を合わせずに聞いてくる。
颯都はポケットに入れていた紙を渡す。
「西園寺琉生」
開くと書かれていたデカデカとした文字。
璃空の口許はフッ、と孤を描いた。
(取るか取られるか二つに一つ)
(ならば答えは決まっている)
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