アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
target5-21.打開策
-
文化祭の書類整理に追われていたある日。
颯都はその中のイベント案件に目を通していた…のだが。
そこにあったーー“学内人気投票”の文字に、休まず動いていた手が止まる。
箇条書きに連なるのは、生徒会の面々の名前…部活動や、委員会活動の中心人物の名前。
何故か、琉生や桐臥、和泉まで記載されている。
そして…雪斗の名前も。
颯都は中に自分の名前を見付けた瞬間、書類を持ち素早く立ち上がる。
「どうしたの?」
突然席を立った姿を雪斗が不思議そうに見る。
「…生徒会に抗議してくる」
「えっ、ちょ…颯都!?」
立ち上がった雪斗の驚きに答える事なく、颯都は去っていった。
相変わらず、思い立ってから行動するまでが早い。
しかし、行き先は生徒会。
「…大丈夫かなぁ」
出て行ったドアを見詰める雪斗が、心配げに呟いた。
その頃…生徒会室は、突然の訪問者にざわついていた。
「颯都兄ーー!!」「颯都お兄ちゃん!!」
はしゃぐ双子に目を向けず、真っ直ぐ向かった先。
その席にいつもの様に笑みを湛えて座る人物を睨みながら。
「どういう事だよ」
「…何の事だ?」
提示されたイベント案件の書類に一瞬目をやり、璃空は笑みを崩さない。
惚けているのか知らないが、兎に角腹が立つ。
「…何で俺の名前が入ってんのかって聞いてんだよッ!」
それもそうーー颯都は自分に関するファンクラブや親衛隊が作られないよう規制していたのだ。
作られた場合、公約の通り即座に粛清もした。
颯都は、これまで闇に身を置いていた所為か、好意的な感情を向けられるのが苦手であった。
敵意や殺意ならいい。そっちの方がずっと慣れているし、よく知っている。
だが…恋愛感情を向けられるのは、似合わないのだ。
しかも、何が悲しくて男の好意を受けなければいけないのだろう。
それだけは、勘弁して欲しいというのが本音だ。
「…そんなに嫌か?」
「嫌に決まってんだろ!」
不思議そうな璃空の問い掛けに間髪入れず返す。
ーー嫌われ者ランキングをするなら、一位を取れる確信はあるが。
「兎に角、俺は不参加だ。今後こういう行事からは除外してーー」
「それはムリだね~」
話を聞いていた昶が口を挟む。
「人気投票は文化祭の恒例行事だしー、楽しみにしてる人だって多いんだからさぁ。
棄権なんてナンセンスでしょ」
それにー…と昶は颯都に視線を向けて、にやりと笑う。
「委員長がどれくらい票を取るか、興味あるし」
「「僕も僕も~!!」」
昶の後ろで双子が元気よく手を挙げている。
「…漆原、お前は良いのかよ」
表情が引き吊るのを感じながら、京弥に横目で視線を送る。
どちらかというと、彼も得意ではない筈だ。
「…競い合ってこそ磨かれるものもあると思います」
意外な言葉に驚いていた颯都の腕を璃空が掴む。
「行くぞ」
「はぁ?…おい、離せ!」
生徒会室から出た時、璃空の腕を力任せに振り解いた。
「…話なら此処で聞く」
「勝負をしよう」
「…はぁ?」
向き合った璃空から出た突飛な申し出に、颯都は眉を寄せる。
「俺が一位を取ったら、俺と付き合え」
「…誰が」
「お前に決まっているだろう」
颯都の頭に、雪が好きなんじゃなかったかという疑問が一瞬過ったがそれは放置した。
「…俺が勝ったら?」
「…お前の頼みを一つ聞いてやろう」
颯都は、好戦的に口角を吊り上げた。
(今の状況を打破出来るか)
(…此は賭けだ)
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
81 / 108