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四十九。
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*
ーーーー暗い、
ーーーーとても暗い、闇の中……。
『慎太郎。』
『慎太郎くん。』
………名鳥と、葵さんの声が聞こえる。
2人の声はどこから?
本当は生きていたのか?
暗闇を掻き分けるように、慎太郎は両手を彷徨わせる。
ーーーーすると彼の前に、突然赤い影が現れた。
『哀れですよ、二条 慎太郎。』
その声はトウヤの声にそっくりだった。
赤い影は背を屈めて、慎太郎の顔をジッと見つめる。
『もう忘れたんですか。……あの2人はもう、死んだんですよ?』
その言葉が聞こえた瞬間、走馬灯のようにあの日の出来事が慎太郎脳裏に再生された。
『ーーーーーーッ!!!』
壊れる建物中で、葵さんを見捨てた時の自分。
銃で頭を撃ち抜かれ、横たわる名鳥の姿。
『うわああぁぁぁっ…!!!』
夢の中で慎太郎は蹲り、耳を塞いで大きく叫んだ。
思い出したくない……!!
信じたくない……!!
ガタガタと震える慎太郎に、トウヤの声をした影が囁きかける。
『駄目ですよ、目を閉じては…。…さぁ、ちゃんと目を開けて。現実を見ましょう。』
目を閉じた慎太郎に、影は手を重ねた。
『この気持ちから逃れることは許しません。あの時の憎悪を、もうお忘れですか?』
"絶対に俺が、お前たちを地獄にぶち落としてやる!!"
"どうして俺たちが、こんな目に合わなきゃいけないんだよ…っ…!!"
そうだ……。
あの時の俺は………。
『貴方は悲しんだ目より、憎しみの籠った目がとても美しい。』
悲しみに暮れた慎太郎の存在を、黒い絵の具が真っ黒に塗り潰していく。
さぁ、目を覚まして。
貴方はもう、弱くないんですよ。
ーーーーーーー
ーーー
「………………………。」
ゆっくりと、慎太郎は瞼を持ち上げた。
視界に見えたのは、部屋の天井。
そこから彼は起き上がり、辺りを見渡した。
「…………………。」
慎太郎の隣には布団を敷かず、静かに寝ている冬護の姿がある。
窓を見てみると、外はまだ雨が降っていた。
慎太郎は無言で立ち上がって、タンスから下着と服を取り出す。
それらを着用して、彼はギターケースを肩に掛けた。
そして冬護にバレないよう、彼は気配を消して玄関へと向かう。
キィ…………
ドアノブを引くと、小さく寂しげな音がした。
バタンッ
「……………………。」
扉が閉まる音がした後、冬護はゆっくりと目を開ける。
部屋の隅には、慎太郎がいつも着用していたヘッドホンが置いてあった。
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