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陸
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それから色々と話をしていたら下校の時間になった。
だが、結局最初に気になっていた事は聞けてない。
「…もうこんな時間か。柳もお帰るんだろ?
俺、車で来てるから送ってやるよ。」
「えっ?!いいですよ。僕遠いんで。」
大丈夫ですよー、なんて言っているが
遠いなら尚更送ったほうがいいだろう。
「いや、放課後呼び出したの俺だからな。
今日だけ、特別に送ってやるよ。」
そう言った俺に、柳はフフッと笑い
じゃあ、お願いしますと答えた。
いつもなら生徒を車に乗せるなんてあり得ない。
でも、柳は一緒にいても全く苦にならない。
「お前、遅くなって親心配しないのか?」
何気なく口にした言葉に、柳はえっ?と
驚きを見せた。それから何か考えだした。
「あ、僕両親亡くなってて一人暮らしなんです。」
驚いた俺は運転中にも関わらず、前方から目を離し
勢いよく隣に座る柳を見てしまった。
「知らなかったですか?フフッ」
知らなかった。担任なのに。
面倒臭いからと柳の資料をちゃんと読まなかった。
「…悪かった。俺、担任なのに……。」
「先生?僕ね、両親亡くなった日の記憶はないんですよ。
だからあんまり悲しくないというか…まあ、
先生は気にしないで下さい。フフッ」
情けなくなった。
本当は笑える様な話しではないはずだ。
でも、二人きりのこの空間が重くならないように
柳は笑顔でいてくれるのだろう。
目の前にいる10代の少年が
自分よりも遥かに大人だと感じた。
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