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Daydream Twitterからのお題 番外編
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Twitterにて マキさんからお題 他 頂きました。
……………………
Side 斜め後ろの席の男
その人は 一心不乱に何かを読んでいた。
ここは 新幹線の中。
僕は 地方出張を終えての帰りだった。
ひと仕事を終えて 緊張も緩んで駅の売店で買ったウィスキーの小瓶をチビチビ飲んで すいていた車内を見回した。
この車両には僕を含めて2人しか乗客は居なかった。
もう一人の乗客である通路を挟んで斜め前の席に座っていた男性を 見るとはなしに眺めた。
時折 後ろから見える顔は端正で 普通のジャケットとジーンズというありふれた服を着ていたが 清潔感漂う 襟足に見とれてしまった。
はっきりいうと僕は昔から女性には興味を持てなくて 恋愛対象も男性だ。特に 肌が綺麗な人。そして襟足の綺麗な人には 心騒がずにいられない。
その ちょっと心くすぐる人は 何かを読んでいた。それは手紙か何かのようで 数枚の手紙を繰り返し 繰り返し読んではため息をついていた。
ため息を吐くその横顔が 悲しそうで 切なそうで 何故か 気になる。
そのとき ふと振り向いた彼。
目が合ってしまった。
すると 向こうから話しかけてきた。
「あのー。失礼なんすけど どちらまで行くんすか?」
見ていたことを咎められるかと 思ったが 違ったようで 少し安心しながら
「僕は終点 東京までです。あなたは?」
「俺も 東京まで。こんな時間だし もう誰も乗って来ないでしょうから 良かったら こっちの席でも来て 酒付き合ってもらえませんか?」
と はにかむように 儚く 笑った。
保護欲を掻き立てる その笑みに 何故か 心が締め付けられる。
チビチビ飲んでいたウィスキーの小瓶を持って立ち上がると 彼は 窓側に席を移り 通路側の席を 空けてくれた。
近くで見るその顔は 可愛らしくもあり 人を惹き付ける。
彼は小瓶の日本酒を鞄から取り出して 更に 紙コップを出して注いでくれた。
酒の酔いの助けを借りて ため息の理由を聞こうか 止めようか。
すると
「なんか 俺ね 通りすがりのアンタに 悩みを ぶちまけても良いですか?」
頷くと 彼は
「俺ね 振られたんですよ。
別れてきたんすよ。
これから 独り暮らしをしなくちゃなんねぇ。
でもね なんか 悲しくないんすよ。
一緒にね。住んでたんです。九州でね。
一応 好きだったと思うけど。でもね 気ぃ抜けたけど。悲しくない気もするんです。
俺 都内に 自分のマンションあるから 住むとこ 困んないけど。
一緒に住んでた奴に 冷たい って。
手紙をね。冷たい人間だって。書かれていて。
俺は まともな 恋愛したこと 無かったみたい。
馬鹿みたいな男なんすよ。」
そうか 誰かと 同棲して 別れて 詰られて 東京に向かっているのか。
こんな優しそうな 可愛い 男を 振るなんて。
馬鹿な女だな。
この男が ゲイなら 僕が 喜んで 引き受けるのに。
…………………………
Side 手紙を読んでいた男
俺は なんだか 自己嫌悪になっていた。
誘われて カラダを繋げて 誘われるまま一緒に暮らして。
まぁ好きだと思っていた。でも 冷たいって詰られて。別れてくれと言われた。
九州まで きてやったじゃねえか。それでも不満なのか?
そうか 俺は アイツを好きじゃなかったのか?
別れてもあんまり 悲しくない かもしれない。
さっき 席に着くとき見かけた 背の高いイケメンが 何故か気になって仕方ない。
斜め後ろからの視線も感じる。
なんか 旅の恥はかき捨てって 言うじゃないか。思いきって酒でも誘ってみようか。
声をかけると 気さくに 応じてくれた。なんか グッとくる声だなぁ。ガタイも良いし 包容力も有りそうだし 何より 柔らかで優しげで。
話している内に どんどん甘えていきそうで 怖いくらいだ。
見知らぬ俺みたいな奴に 慰めの言葉と きっと良い未来が来るって 力強い言葉もくれた。
聞けば 彼も 悲しい片想いが 実らなかったらしい。
こんな良い男を 悲しませる女が居るんだなぁ。
この人が ゲイなら きっと 本気で恋してしまいそうな気がする。
このひとには 幸せが似合うだろうな。
幸せになってもらいたいな。
………………
やがて 深夜の東京駅に 新幹線が 到着した。
そして お互いの 幸せを 心から祈りつつ 互いの真意と氏名も明かすことなく 右と左に 別れていく 2人であった。
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