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「そんな事思う訳ない!!」
「だよね、分かってるさ……。だから、落ち着いて僕の話を聞いて欲しい。この最低最悪な世界で、最も『最低な地区』である、この第二地区の奴らから聞いた事や、ここで調べた情報を、鵜呑みにしたら駄目だよ? 何故なら……」と、アレクセイは俺の頬を優しく慰めるように撫でながら、さらに言葉を続けて。
「あの歌はね、第二地区の奴らでは、知り得ないものであり、『第一地区の貴族と、第五地区の貴族』だけしか、歌えない歌なんだ……」と、答えるので。
「えっ……それってどういう事? 二つの地区の貴族だけしか、歌えないって……マジ? というか、アンタ第二地区の公爵だろう? 尚更なんで、歌えるんだよ?」と、そう驚いた声で言い返せば。
「あはははは、ヴィクトル……もしかして、忘れてるのかな? 僕は第一地区の皇女の息子でも、あるんだけど……。あとさ、この第一地区の生まれ100 %の外見で、そう言われると、流石に僕も、ビックリしちゃうな」と、アレクセイはクスクスと、面白い事があった時のような笑みを浮かべて、今度は楽しげにそう答えるので。
俺はそれに対して、ムッとした表情を浮かべて……。
「なっ……別に忘れてなんかない!! さっき俺が言った事は、えっと……その……」
「あははは、そうきたか。いいよ、忘れてあげる……。忘れてあげるから、ほっぺにキスしちゃうね」
「おい、バカやめろ!? つうか……さっきの話本当なら、証拠とかあるよな? まさかないとかは、流石にないよな」と、猫を可愛がるような戯れ的な遊びをするアレクセイに。
俺はそう言って、詰め寄れば。
「証拠? もちろんあるよ、ない訳ないよ……。だって僕は、君だけには嘘をつかないって決めているから、信用して欲しい……。だからこれが、君が知りたかった答えさ」
アレクセイは耳元で甘く囁いてから、黒のスラックスのポケットに入っている、スマートフォンを取り出して……。
その中に保存されている『ある動画』を、俺に見せつけるかのように、再生しながら。
──にこりとは違う、何処か過去を懐かしむような笑みを、見せるので……。
俺はその笑みは何だろうと思いながらも、あの動画が嘘なのか、それとも本当なのかを。彼には悪いが、自分の目で見て、最後の最後まで深く考えてから、判断しようと思ったので。
3分という短い時間のそれを、本当に『そうなのか?』という疑いの気持ちを持って……。
──見極める為に、真剣な眼差しで、その動画を見つめれば。
なんと、そこには……。
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