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season #18
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「カズ、昨日はありがとう。」
特殊学科校舎の廊下で、和哉を見かけて智が駆け寄っていく。
「どういたしまして。」
和哉がニッコリ笑って答える。
智もニッコリ笑って和哉の隣に並んで歩く。
「カズのおかげで……なんか、軽くなった。」
「ふふふ、よかったですね。」
「うん。カズ……大好き。」
智はふにゃりと笑って和哉を見つめる。
「こらこら、勘違いするから、あんまりそういうことは言わないの。」
和哉が智の頭をコツンと叩く。
「だって、本当なんだよ~。」
智は和哉の体を両手で包み込む。
「それじゃ、歩けないでしょう。」
和哉は笑いながら智の腕を解き、その手を繋いだ。
「ほら、みんな待ってる。」
木の下のテーブルには、もうすでに3人が座っている。
二人の姿を見つけ、雅範が手を振る。
和哉は智と繋いだ手を挙げて、左右に振った。
修のビックリした顔が目に映る。
和哉は不敵に笑うと、智の手をギュッと握った。
それに気づいた智が、和哉に視線を移す。
修は和哉の視線から目を逸らし、またチラッと二人の繋いだ手を見やる。
和哉はクスクス笑い、テーブルまで来ると、二人並んで腰掛けた。
「昨日は本当に部活休んだの?」
淳一が肘をついて箸を動かす。
「ええ、休みましたよ。ね?」
和哉が智に目配せする。
智もうなずいて、淳一に向って微笑む。
「いいよなぁ。ゆるい部活は。」
「ええ、そうでしょう?ジュン君もどうですか?写真部。」
「俺には無理。……甲子園が待ってるから。」
淳一は決め顔で智をみながら、肉団子を頬張る。
「ジュン君、甲子園なんて、興味あったっけ?」
雅範が割り込む。
「ん~。行きたくなった?」
淳一がニヤッと笑って修を見る。
修はみんなから顔を逸らしてそっぽを向いている。
「そう言えば、彼女とは上手くいってるの?」
淳一が修に向ってそう言うと、修は少しだけ顔をみんなに向ける。
「……別れた。」
「え~~っ!もう別れたの?」
雅範が素っ頓狂な声を出す。
「そうだよ。」
また修はみんなから顔を背ける。
和哉がニコッと笑って智を見る。
智はちょっと困ったように笑う。
喜んでいいのか、あの悩んだのはなんだったのか、
とにかく、悩みの半分はこれで解消された。
「修君、大丈夫だよ。すぐにいい子がみつかるよ。」
智の言葉に修は一瞬動きを止め、
弁当を一気に口にかっ込んでいく。
「修ちゃんも複雑だねぇ。」
淳一がニヤニヤ笑うと、和哉もうんうんとうなずく。
修は水筒のお茶をゴクゴクと飲み込むと、プハァーと息をついた。
「修ちゃん、おやじ臭い!」
雅範が修を指差して笑う。
「うるせぇ!」
修がチラッと雅範の方を見ると、視界の隅に智の姿が入る。
「あ、修君……。」
智はポケットからハンカチを取り出して、
修の頬についたケチャップを拭った。
うまく拭えなくて、反対側の頬を手で固定して拭うと、
修の顔が見る間に赤くなっていく。
「うん。きれいに取れた。」
智がふにゃりと笑うと、修は弁当箱と水筒を掴んだ。
「悪い。俺、先行くわ。」
立ち上がり、校舎に向かって走り出した。
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