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season #32
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「そうなんだよ。昨日、変なヤツがさ。」
雅範がウィンナーをかじりながら和哉に言う。
「変なヤツ?」
「うん。智に聞いたら友達だって言うんだけど……。」
「友達?智の?」
和哉が怪訝な顔で雅範を見る。
今日のランチの一番乗りは和哉と雅範だった。
他の3人はまだ来ない。
「うん。」
「でも、雅範は知らないヤツ?」
「そうなんだよね~。どっかで見たような気もするんだけど……。」
「ふうん。小学校とか?」
「かもしんない。でも、なんかそういうんじゃなくて……。」
「なんなんですか?」
「う~ん、わかんない。」
雅範はひゃっひゃと笑ってごまかす。
「あなた、ほんと、使い物にならない……。」
「そんなこと言うなよ~!」
雅範が和哉の口にウィンナーを突っ込む。
和哉は一瞬びっくりして、すぐにもぐもぐと口を動かす。
「……旨い。」
「な、旨いだろ?このウィンナー、大好きなんだ♪」
雅範がニコニコと和哉に笑いかける。
もうさっきの話は忘れてしまったように、ウィンナーを頬張る。
「ラブラブじゃん♪どうしたの?」
淳一が和哉の隣に腰掛ける。
「ラブラブ?誰が?」
「あんたら二人。あ~んとかして。」
淳一がクスクス笑う。
「違うから。無理矢理、口に突っ込まれただけだから。」
「ふふん、ま、そういうことにしといてやるよ。」
「バカのせいで、ジュン君、誤解しちゃったよ。どうしてくれる?」
和哉が不機嫌そうに雅範を睨む。
「そんなこと言うなよ~。」
雅範が情けない顔で和哉の腕を掴む。
「知るか!」
和哉は淳一の方に体を向けると、さっきの変な男の話をした。
「どう思う?」
「まぁ、まだよくわかんないけど……。」
淳一もお弁当をパクパク口へ運ぶ。
「あ、思い出した!ジュン君と同じクラスだって言ってた!」
「俺と?」
淳一が唇の端を上げて、首を捻る。
「うん。」
「なんでそんな大事なこと言わなかったんですか!」
「忘れてたんだよ~。」
雅範は怒られた子犬のように、首を竦めて小さくなる。
「俺の……。名前は?」
「……。」
「名前!」
和哉が強い口調で雅範に言い寄る。
「わかんない……。」
「わかんないって……。本当に使えない……。」
和哉が溜め息をついた。
「智は知ってんじゃない?友達なんだから。」
雅範が逃げるようにそう言うと、卵焼きを頬張った。
「甘い!」
和哉は雅範を指差し、鋭い眼差しを向ける。
「相手は智ですよ?友達になるのに名前が必要だと思いますか?」
雅範と淳一は考え込んだ。
そこへ、智がやってきた。
「ごめん。遅くなっちゃった。」
智はニコニコ笑って、みんなの反対側に腰掛ける。
「ねぇねぇ、昨日の友達、名前なんて言うの?」
「友達?」
智が首を傾げる。
「ほら、帰りに会ったじゃん。自転車に乗った……。」
智の顔がパッと明るくなる。
「ああ、うん。友達ね。」
「そうそう、名前、何て言うの?」
「え……知らないよ。」
三人は顔を見合わせる。
「ね、言った通りでしょ?」
和哉が得意げに笑う。
「じゃ、どうして友達なの?」
淳一が前のめりになって智に聞く。
智はお弁当を出しながら、にっこり微笑む。
「友達になってって言われたから。」
「で?」
淳一がまさかと言った顔で智を見つめる。
「うん。いいよって。」
智はニコニコしながら、ご飯の塊を口へ運ぶ。
「それ、いつの話ですか?」
和哉は溜め息混じりに言う。
「う~んと、ちょっと前?修君なら覚えてるかも。」
智が斜め上に目をやりながら、答える。
「あ、修ちゃん、今日ランチ来ないって。言うの忘れてた。」
淳一が悪びれた様子もなく、そう言ってご飯をかっこむ。
「修君、どうしたの?」
智が心配そうに淳一を見つめる。
「なんか……部活のなんちゃら……って言ってたような?」
「そっかぁ。じゃ、しょうがないね……。」
智は眉を下げて、箸を咥えた。
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