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season #34
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その日は真夏を思わせるほど、ジリジリと暑かった。
夏休みまであと少し。
淳一はいつものように部活に出ると、吹き出る汗を拭いながら、
ランニングを始める。
1年全員並んで学校を出る。
学校の外周から近くの公園を周って帰ってくる、およそ10Kmのコース。
正確には公園で少し休憩して、また帰ってくるので5Km×2になる。
唯でさえ汗が出る熱さの中のランニングはきつい。
淳一は、ペットボトルを片手に最後尾を走る。
走るのは嫌いではなかったが、かったるいのも事実。
景色の変わらない外周だけだったら、到底できるものではなかった。
やっと公園に到着し、いつも休憩を取る場所へ向っていると、
途中で見知った顔を見かける。
智だ。
智がスケッチブックに夢中になっていた。
ちょっと唇を尖らせて、鉛筆を動かしている姿がやけに可愛い。
淳一は隣にいる仲間に手で合図して、ランニングの列から離れる。
少しずつ速度を落とし、息を整えて智の後ろにやってきても、
智は一向に気づかない。
淳一はクスクス笑いながら、そっと智を見つめる。
額に溜まった汗がこめかみを伝い、柔らかそうな頬にかかる。
そんなことも気にせず、一心不乱にスケッチを続ける智が
淳一はちょっと心配になる。
あのままじゃ、熱中症になっちゃうんじゃない?
今の気温は30度を越えている。
そのまま様子を伺っていたが、智がまるで熱さを気にする様子もなく
描き続けるので、淳一は本当に心配になる。
どこまで集中しているのかと、ゆっくり真後ろに立ってみる。
全く気づく様子がない。
この集中力じゃ、きっと水なんて飲んでないよな……。
そう思って、ゆっくり隣に腰を下ろす。
さすがに智も気づいてチラッと淳一を見る。
「……ジュン君?」
鉛筆を止めることなく、笑顔を浮かべる。
サラサラと動いていく鉛筆を見つめながら、汗の滲んだ顔でこの偶然を喜んでいる。
そんな智を見て、淳一の胸がざわつく。
智は修ちゃんのことが……。
淳一は持っていたペットボトルの水を口に含むと、智の顎と後頭部を掴んだ。
智が、え?っと思っている内に、淳一は上から見下ろすように
智の唇に唇を重ねる。
顎を掴む指に力を込めて、智の口を開かせると、
その中へ水をゆっくり流しこんでいく。
智の柔らかな唇が軽く閉じ、喉が上下に動く。
淳一は唇を離し、智に向って微笑む。
「ちゃんと水飲まないと、熱中症になっちゃうよ?」
「び、びっくりした~。」
智は笑って、唇の端を漏らした水を手で拭う。
「もっと飲ませてあげようか?」
淳一が片頬をあげて、ペットボトルを持ち上げる。
「い、いいよ~。だ、大丈夫だから。」
智は頬を染めながら笑う。
「遠慮するなよ。」
淳一がオーラ全開の笑顔を智に向けると、智の胸がドキドキと波打つ。
「もう!そんな顔しないでよ。」
智が淳一の胸をトンと押す。
「そろそろちょっと休憩して、水飲もうと思ってたんだよ。」
「本当かな?」
「本当だよ!」
智が口を尖らせて、クスリと笑う。
「……外にいる時は、ちゃんと考えるんだよ?」
そう言って、淳一は智の頬を摘む。
「んふふ。久しぶりだね。ジュン君が摘むの。」
智がふにゃりと笑う。
「ん?修ちゃんがうるさいからね。」
淳一は片目をつぶって、智の頬を撫でる。
「こんな風に触ってると、修ちゃん、やってくるでしょ?」
「そうだっけ?」
二人がクスクス笑っていると、バタバタと足音が近づいてくる。
足音に気づいた二人がそっちの方を向くと、すごい勢いで走ってくる
修の姿が目に入る。
「ほらね?」
淳一が言うと、智が嬉しそうにクスクス笑った。
「……しかし、修ちゃんのセンサー、半端ないね?」
二人の所へ辿り着いた修は、息を切りながら二人の間に割って入る。
「修君、今日の練習、ここのグラウンドだったの?」
智が聞くと、はぁはぁ息を切りながら修が大きくうなずく。
「ったく、どこにでもやってくるな。」
淳一がぼやいた。
「はぁ、はぁ……、お、お前、き、気安く智に触るなよ。」
修が立ったまま、膝に手を付き、顔をあげる。
ふうん、さっきの口移しは見てなかったのか……。
淳一は修の顔を見て、フフッと笑った。
「なんだよ!」
修が威嚇する。
「いや、なんでもないよ。」
淳一は智に笑顔を向けると、片目をつぶって口に人差し指を当てた。
「な、なんだよ~!何、内緒にしてんだよ~!」
修が叫ぶと、智が大きな声で笑った。
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