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season #60
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「智!?」
修が水の中を覗き込むと、すぐに智が浮かび上がってくる。
ザバァー。
水が盛り上がり、その中心から智が顔を出す。
「ぷはぁ~っ!冷たくて気持ちいい!」
水に塗れた髪に光が当たってキラキラしている。
修は一瞬にして目を奪われる。
智の作り出す波紋は、ゆるやかに広がっていく。
光の波もゆるやかに波打つ。
この幻想的な世界に、智が溶け込んでいく。
修は思わず、智に向かって手を差し伸べる。
捕まえていないと、どこかに行ってしまいそうで、
溶けて消えてしまいそうで、胸がキュッと締め付けられる。
智はその手にゆっくり手を重ねる。
ぎゅっと握ると、ふにゃりと笑い、グッと引っ張る。
あっという間に修は水の中に落ちていく。
水の中は外よりも幻想的で、自分の周りの空気の玉と光の線が、
重なる度にキラキラと輝く。
小さな魚達がところどころで影を落とし、目の前の智の体は
光のベールを纏って揺らめいている。
修は智の体を抱きしめる。
抱きしめて、生身の智を確認する。
冷たい水のせいか、ぬくもりはほとんど感じられない。
それでも、その肉体の存在は修を安心させた。
抱き締めながら、浮かんでいく。
水の上に二人で顔を出すと、お互いを見つめあい、クスリと微笑みあう。
「そこ~っ!どさくさに紛れて、抱き合わない!」
和哉の罵声が飛ぶ。
修はハッと気づいて、智の背に回した腕を外す。
智は修の腰に手を回したまま、にっこり笑う。
「気持ちいいでしょ?」
修は徐々に平常心を取り戻すと、
智の腕の感触と、智の顔の近さに頬が染まっていく。
「う、うん……。」
修は片手で岩を掴み、片手で智の腕を掴む。
「じゃ、俺も!」
雅範は立ち上がると、水に向かって綺麗な弧を描く。
「ここ足付く?」
和哉がそっと水の中を覗き込む。
「足は付かないけど、そんなに深くないよ。」
智はにっこり笑うと、和哉に向かって片手を差し出す。
「俺も行こ!」
淳一が水の中にダイブする。
大きく水しぶきが上がり、光に反射してキラキラ眩しい。
「すっごい!魚がいっぱい!」
雅範が一番奥から顔を上げて手を振る。
すぐに隣で淳一の顔が浮かび上がる。
「ほんと、すげぇ!綺麗!」
二人は智達に手招きする。
「カズも行く?」
智が差し出した片手をもう一度、和哉に向ける。
「私はここで見てますから。」
「すっごく綺麗だよ。カズにも見せてあげたい。」
智の笑顔に、和哉の心が動く。
「ちょっとだけ、入ろうよ。みんないるから大丈夫。」
智が優しく言うと、修も隣から和哉に手を差し出す。
「あれ?25m泳げるんじゃなかったっけ?」
修がクスクス笑いながら言う。
「お、泳げるよ!」
和哉は二人の手を取ると、目をつぶって飛び込んだ。
和哉の体はグンッと一気に沈んでいく。
水の底で丸くなった体が少しずつ開いていく。
和哉が水の底で目を開くと、見たこともない美しい光景が広がっていた。
エメラルドグリーンに彩られた光の線が、幾筋も水の底まで差し込まれ、
その周りを小さな魚が泳ぎまわる。
天使がいてもおかしくないような、神聖さまで漂わせて、
シンと静まり返った水底に足をつく。
聞こえる音は、自分の体から沸きあがるあぶくの音のみ。
上を見上げると、すぐのところに智と修の笑顔が見える。
近づいてくる笑顔は雅範と淳一。
和哉は水底を思いっきり蹴り上げた。
ゆっくりと浮かぶ自分の体を水に任せ、水面に顔を出す。
「すごい。現実じゃないみたい。」
和哉は顔の水を手でぬぐいながら、みんなを見回す。
「ね?入ってよかったでしょ?」
智が嬉しそうに和哉の腕を掴んで岩を掴ませる。
「うん。カメラ……撮りたかったな。」
「防水じゃなきゃ無理でしょ?」
「そうだけど……夢がないなぁ、修ちゃんは。」
和哉が口を尖らせて修を見ると、智に抱きついた。
「私、泳げないから智にずっとくっついてないと!」
和哉の両脇から、淳一と修が引き離した。
みんなで潜ったり、魚と戯れたり、楽しい時間が過ぎていく。
「ああ、楽しいね。」
雅範が岩の上に腰掛ける。
「洞窟探検、どうする?」
修も隣に腰掛ける。
「先に何かあるかな?」
「行ってみないとわからないけど……。」
淳一が水の中から顔を出す。
「行ってみる?」
「ジュン、聞いてた?」
修がびっくりして聞く。
「聞いてたよ。先も見てみようよ。ここは十分わかったし。」
「そうだね、そろそろ行く?」
雅範が立ち上がろうとすると、周りを見回す。
「カズは?」
三人で辺りを見回すと、和哉は智と一緒にプールから出て、
先に繋がる道の脇に座りこんでいた。
和哉の手が智の背中に回っている。
「カズ!」
修が勢いよく水から飛び出した。
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