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season #59
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「雅範!」
和哉が声を掛ける。
「あ、大丈夫。真っ暗じゃないよ!」
雅範がどんどん入っていく。
「先、行けそう?」
修が一番後ろから大声を出すと、雅範の声にエコーがかかって返ってくる。
「すぅっごいぃ涼しぃいよぉ~!しかもぉ、なんかぁプールみたいぃ~!」
「プール?」
和哉が淳一の背中を押して入っていく。
「ちょ、ちょっとカズ!」
足元をグラグラさせながら、淳一が押されていく。
和哉の後ろから、智もゆっくりついていく。
修が智の肩越しに中を覗くと、青く揺れる水が見える。
「うわっ!綺麗~♪」
智の目がキラキラ輝き、和哉も淳一の背中から顔を出す。
入り口から少し入ったそこは、吹き抜けのホールのようになっていて、
その下に大きな岩をくりぬいたような水溜りがある。
智達の足元、ほんの1m位を除いて、すべて深い青だ。
プールは直径10m位あるだろうか。
天井の隙間から、幾筋もの光が差し込んでいる。
太い線、細い線が平行に、重なり合うように引かれている。
その光が、青い水面に突き刺さり、不思議な模様を描き出す。
大小さまざまな光の輪の中に映し出された水は、ひどく澄んでいて、
薄いエメラルドグリーンに輝いている。
そして、その光が洞窟の中を明るく浮かび上がらせる。
時折、その中を小さなグレーの影が通り過ぎる。
5人はしばらく黙って見つめていた。
天井から雫が落ちてピチョンと音がする。
それと同時にプールの中央から広がる小さな輪が、大きく広がっていく。
広がる波に乗せて、揺らめく光の輪。
洞窟の中を照らす光も、また揺れる。
またピチョンと音がする。
プールの端の方から輪が広がる。
規則的に聞こえる波の音と相まって、幻想的な光景に、思わず溜め息がこぼれる。
光の波紋と音に、ただ酔いしれた。
そんな空気をやぶったのは、淳一だった。
「ああぁ……。ここで歌うたったら、上手く歌えそうじゃない?」
淳一はそう言って、あ~と天井に向かって声を響かせる。
天井中に響いて、まるでエコーを掛けたように聞こえる。
5人はおもしろがって、口々に声を発する。
その声が輪唱のように天井で重なって、消えていく。
最後まで残ったのは和哉の声だった。
「雅範ぃのばぁ~かぁ~。」
「お前、どさくさまぎれに何言ってんだよ!」
雅範は和哉に、むくれた顔を向ける。
みんなの笑い声も響き渡って、水面が揺れる。
笑いながら、雅範がしゃがんで水に触る。
雅範の手から広がる波紋は、大きくなって中央辺りで消えていく。
「水が冷たい。」
「陽が差さないからかな?」
修もちょっと触ってみる。
修の指先から広がる波紋。
智は右足の親指をそっと水面に乗せると、そのまま足を前に突き出した。
緩やかな波紋と一緒に、小さな水玉がまっすぐな線を描いていく。
「本当だ!気持ちいい♪」
今度はしゃがんで、足首までつけてみる。
「えいっ!」
バシャンと音がして、先ほどより大きな波紋と水玉の線がプールいっぱいに広がっていく。
「智、危ないよ。何がいるかわからないから。」
修は智の肩を掴む。
「でも、サメはいないでしょ?」
「サメはいないかもしれないけど……。」
「うっひょっひょっひょっひょ。サメがいなきゃ大丈夫なの?」
雅範がおもしろそうに笑う。
「うん。サメがいなきゃ大丈夫。」
「それ、映画の観すぎ!」
淳一も一緒に笑う。
「サメ以外にも、未確認生物とか、いるかもしれませんよ?」
和哉がおっかなびっくり水面に触れる。
「大丈夫だよぉ~」
智はプールの端に腰掛けて、膝まで足をつける。
「うふふ。気持ちいい~♪」
「智!危ないから!」
修が智の足を水から出そうと、膝を持ち上げる。
「大丈夫だよ。……あ、見て!」
智の周りにみんなが集まってくる。
智の、ふくらはぎの半分くらいまで出た右足の、親指の先を小魚が数匹つついている。
「うふふ。くすぐったい。」
智がふにゃりと笑って肩をすくめる。
雅範も座って、恐る恐る足を入れる。
雅範の脛の辺りに小魚がよってくる。
「うっひょ!くすぐったい!」
雅範が智を見ると、二人でクスクス笑いあう。
智の隣に修が座る。
智と雅範の間に和哉、一番端に淳一が座る。
みんなが足をつけると、青い水の中で小さなグレーの影が5人の周りに集まってきた。
「あはは。本当にくすぐったい!」
和哉が体を捩ってくすぐったがる。
「気持ちいいね~。」
淳一もみんなの方へ笑顔を向ける。
「うふふ。入りたくなっちゃうね。」
智がみんなの顔をうかがって、最後に修の顔を見てにっこり笑う。
「ダメだよ。危ない。」
修が眉間に皺を寄せる。
「入っちゃう?」
雅範が人懐っこい笑顔でみんなを誘う。
「うふふ。入る~!」
智がスルッとお尻をずらした。
ピチャンと音がして、智が水溜りに消えていった。
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