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season #64
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5人は並んで浜に座る。
「ねぇ、今何時かな?」
雅範が片膝を曲げ、もう一方の足で砂を掻きながら隣の和哉に聞く。
「知りませんよ。ね、修ちゃん。」
和哉は足で丸く輪を作り、砂を両手ですくいながら隣の修に回す。
「ん……たぶん、7時位じゃないかな?」
修は足を投げ出し、後ろに手をついて答える。
すると、修の隣で膝を抱えた智がびっくりする。
「どうして修君わかるの?時計もないのに。」
目を丸くして修を見る。
「いや、それは……。」
修が照れながら答えようとすると、片膝に片腕を乗せて智を見る淳一が、
すかさず口を挟む。
「この時期の日の入りがだいたい6時半だからね。それから考えるとそれくらい?」
まるで自分が答えたように、淳一が説明する。
智は隣の淳一に向かって小さく手を叩く。
「すごい、ジュン君。」
修はムッとして智の顔を自分に向ける。
「答えたの、俺だよ?智。」
「うふふ。わかってるよ。修君がすごいのはいつものことだもん。」
智が膝を抱えたまま、体を揺らしてふにゃりと笑う。
修は頭を掻いて、海を見る。
「これからどうしますか?」
砂を両手の間から落としながら、和哉が聞く。
「う~ん、へたに動くと……。」と修。
「お腹空いた~。」と雅範。
「そうだねぇ。でもなんだか楽しいね。」と智。
「え?こんな状況で?」と淳一。
「うふふ。みんな一緒だもん。」と智。
「昔もこんなことあったよね。」と雅範。
「あったあった!夜遅くまでいて、怒られて!なんだったっけ?」と淳一。
「あれですよ。カタツムリ……。」と和哉。
「違うよ、ば~か。カブトムシ~。」
雅範が和哉に向かってひゃっひゃと笑う。
「雅範のくせにえらそうに!」
和哉が手にしていた砂を投げる。
「やめろよ~!うひゃっひゃっひゃ!」
雅範が砂を投げ返す。
「ばか!俺にまでかかるだろ!」
修が手で砂を払いながら雅範を睨む。
「うふふ。カブトムシ……竜の木、なつかしいね……。」
智が両隣を交互に見ながら、体を前後に揺らす。
「あの時はすごいもん見れたけど、今日もすごいの見れたよね?」
淳一が優しい笑顔を智に向ける。
「うん。……プール綺麗だったね。」と智。
「あれ、満ち潮だったら見れなかったってことだろ?」と修。
「そうだよ、そうだよ。俺ら、やっぱり運がいいよね?
前の時も助けが来てくれたし。」と雅範。
「前の時は助けが来なくても帰れましたよ。道がわかってるんだから。」と和哉。
「今日は素敵な夕陽も見れたし、ほら、今、空の色が変わっていくとこ、みんなで見てる。
なんだか嬉しいな。」
智が一人一人の顔を見る。
みんなボーっと、向こうの陸地を見つめた。
浜にはほとんど明かりはなく、その後ろの山は大きな黒い塊。
空は群青色をどんどん濃くしていく。
左の方の空だけ、ほのかに明るい。
星も瞬き始め、夜の帳(とばり)が降りるのを、5人は黙って見つめていた。
智が両肩を両手で撫でる。
「寒い?」
修が智を見つめると、智はにっこり笑いながら首を振る。
グ~。
誰かのお腹がなる。
「誰だよ~。」
「誰だ?」
5人は、笑いながら指をさして犯人を捜す。
「仕方ないよ。何も食べてないんだもん!」
一番端から、雅範が必死で抗議する。
「お前かよ~!」
淳一も端から雅範を指さして笑う。
「私はわかってましたよ。隣から聞こえたの。優しいから言わないであげたのに。」
和哉がニヤッと笑って、膝を抱える。
ここに来てから何も食べていない。
飲んでもいない。
一晩くらい大丈夫だろうとみんな思っていたが、お腹が空いて寒さが染みると、
だんだん不安になってくる。
しゃべっていないとお腹と寒さのことばかり考えそうで、
みんな他愛もないことを話し続けた。
「……だからさ、一番怖がりは雅範だよ。」
淳一が断定するように言うと、雅範が勢いよく首を振る。
「蝙蝠の時、一番先に逃げたの、修ちゃんじゃなかったっけ?」
雅範が顔を覗かせて、修に確認する。
「違うよ、雅範だろ?」
「俺じゃない!……じゃ、カズだ!」
「私が最初に逃げるわけないでしょ?ね?」
和哉が智に視線を投げる。
「うふふ。誰だったっけね?」
智が遠くの海を見ると、一艘の船が近づいてくる。
「あ、漁船?」
みんな一斉に背筋を伸ばす。
「どこ?」
修は智の肩に手を置いて、できるだけ背中を伸ばす。
「あそこ。」
智の指差す方向を4人はじっと見る。
「ほんとだ!」
雅範が立ち上がり、手を振る。
「こんな暗いとこじゃ見えませんよ。」
そう言いながら和哉も立ち上がる。
「こんな時間に漁船?」
修は首を傾げながら立ち上がる。
「イカとか?」
智も立ち上がり、大きく手を振る。
「イカならもっと明かりを点して……。」
修が考えるように腕を組むと、淳一がポツリと言った。
「たぶん、おじさんが探しに来てくれたんだと思う……。」
「え?おじさん?」
和哉が淳一の顔を見ると、大きな声をあげる。
「お~い!私達はここですよ~!」
それをかわきりに、みんな一斉に大声をあげた。
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