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episode.28 裏切り
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※暴力の描写を含みます。
〜恋side〜
「俺たちが中3の6月のことです。」
*
「明希、今日俺、先生に呼び出されて一緒に帰れない。ごめん。」
「いいよー!気にすんな。てか呼び出しとか大丈夫?」
(多分高校の進路のことだし……)
「うん、大丈夫。気をつけて帰れよ?」
恋は当時160cm、明希は155cmで、周りに比べれば小さい体つき。かつ、明希は男に絡まれることが多く、恋が助けることもしばしばだった。
「わかってるよー!大丈夫だって。」
恋はこの時、少し嫌な予感がした。
(どうしようかな、あ、恋の誕生日プレゼントとか物色しようか?!)
明希は考えると楽しくなってきて、校舎を出ようとする。
その時だ。
「明希。」
「さ、笹倉!」
「あれ、今日は恋いねえの?」
「うん、なんか先生から呼び出しだって。」
笹倉傑。170cmはあるかという身長に爽やかな笑顔。女子からモテるのは言うまでもなく、男子からもモテていた。
「へー、じゃあ一緒に帰ろ?」
「え、うん!」
明希は傑が好きだった。
誰にでも優しい性格に、他人からの信頼が厚く、正義感も強い。以前に明希を守ってくれたことがあったりもした。
帰り道を歩き、明希の家の前に着いたとき、傑は明希の腕を掴んだ。
「待って!」
「な、なに?!」
突然腕を掴まれて明希は驚き、頬を少し赤らめた。
「俺さ、明希のことが……」
翌日。
「明希、昨日大丈夫だった?」
「うん!」
「なんかいいことあった?」
「まあね。」
この時はまだ、恋は明希がゲイだということを知らなかった。それに明希もそれを話すつもりはなかった。
もっと言うならば、2人は表面上の親友だった。
恋の両親のことを明希は知らない。
「そっか、久しぶりにそんな嬉しそうにしてんなぁ。」
「そうか?」
その時は幸せそうにニコニコしていた明希が、それからしばらくして、表情を曇らせるようになった。
恋は、何かあったのか、と心配にはなるものの、明希に突っ込んだ話ができずにいた。それが、傑が明希につけ込むことを招いてしまったのかもしれない。
事件が起きたのは、ある日の放課後だった。
「傑?話ってなに……?」
明希は傑に、体育館裏に呼び出されていた。
「ごめんな。変なとこに呼び出して。」
「ううん。大丈夫。」
「な、明希、こっち来て。」
傑はそう言うと手を差し出す。
明希は不思議に思いながらも傑の手を取り、連れられて歩き出す。
連れてこられたのは、今はほとんど使われていない倉庫だった。
「……傑?」
そこまでくると傑は明希の手を離した。
「あーあ、明希、お前ほんと可哀想だな。」
「……え?」
「親からもいらないって思われてるもんなぁ?」
明希は傑がなにを言い出したかわからなかった。
「でも俺はお前のこと、欲しいんだよね。」
「な、に言って……」
「おーい、出てこいよ、いい加減さ。」
傑はケラケラと笑っている。
「傑……?」
明希は不安を募らせる。
物陰から男が5人ほど出てきた。それは傑と同じ部活の男たちだろうか、明希たちのクラスの生徒ではなかった。
「おとなしくしてね。」
「叫ばれたら困るし、縛っちゃおうぜ。」
状況がわかっていない明希に、ジリジリと迫る男たち。
「嫌……助けて、傑……!」
明希は傑を見る。だが傑はニヤニヤと笑うのみで、なにもしない。それどころか、こう言い放った。
「俺が本気でお前のこと好きだと思った?んなわけねーじゃん?ちょっと遊んでやりたかっただけなんだよね。」
「す、ぐる……」
驚きで立ち尽くす明希を、男たちが思いっきり殴る。
「ゴホッ、ガハッ……」
明希はすぐに地面に倒れこむ。
倒れこんだ明希を今度は蹴り出す男たち。
「ほら、目的はそっちじゃないんだから。早く縛っちゃいなよ。」
「そうだな。」
「いいなー、可愛い。こんな面白いおもちゃないよ。」
(恋……)
明希の目には涙が滲んだ。
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