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episode.82 記憶の片鱗
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※「もう一度、僕を呼んで」のepisode.14-7、14-8とリンクしています。
〜恋side〜
「お話とかいうけど……何話す気?」
自己紹介やら何やらをもう一度行い、恋は明希にそう聞く。
「んふふー、女子トーク!」
誰も女子がいないが、という全員からの目線を全く気にすることなく、明希はニコニコしている。
「みんなお相手はいるわけで、しかもネコでしょ?一回そういうお話してみたかったから!」
「……そういうことなら俺は構わない。」
「僕もいいよ!」
クレアとラズは無言だが、否定なしということは肯定ととっていいだろう。
「……俺、話せることないけど……?」
「レンの相手はリュウ・アカツか?」
「あ、まぁそうらしいんですけど……半年の記憶が飛んでるせいで、よくわからなくて……」
「赤津さんのこと、好きになりそうなの?」
明希のこの質問にはクレアやラズも少し反応を見せた。
「今は好きじゃないの?」
クレアがそう言い、ラズも同じことを聞きたいのだろう、じっと恋を見つめてくる。
「……何ていうか、胸がキュってなったり、心があったかくなったり、一緒にいると安心したり……そういうのはあるけど……」
「……それを好きって言うんだよ……?」
「うん、好き以外の何物でもないね……?」
明希とロンがそう言う。
"それが、好きなの?"
ラズがメモでそう聞いてきた。
「そうみたい、だな……」
恋は曖昧に返事をした。
"僕、何も感じないから……分からない。ジル様のことは、守りたいとは思うけど、それ以外は何も"
「ラズは、嬉しいとか楽しいとか思わないんだ……」
明希はラズのメモを見て、悲しそうにそう呟く。
"でも、僕はこのままでいい"
たった17歳のこの少年は、なにか過去を抱えているらしい。それは恋や明希にはすぐわかることだった。
「レン、告白しないの?」
恋はそのままでいいのか、とでも言いたげにロンがそう言ってくる。
「こ、こ、告白っ?!」
恋は顔を真っ赤にして動揺した。
「……なかなか可愛い反応をするな。」
ハンスがそれを見てクスクスと笑っている。
「し、ないよ……だって、俺には記憶ないし……するなら、ちゃんと、全部思い出してから……」
「そっか……恋がそう決めたなら俺は応援するぞー!」
「記憶が早く戻るといいな。」
「ありがとうございます……そういえば、ハンスさんは、誰が番なんですか?」
「アキを助けた黒髪の男だよ。」
「……アレン?」
「あぁ。」
そう言うハンスは微笑んでいて、あぁ、アレンが好きなのか、と恋は思った。
「アレンはハンスさんにゾッコンだよなぁ。」
"アレンさんはハンスさんと一緒にいると強くなる"
恋と明希はロンとラズの話を聞いてクスクスと笑った。
「……恥ずかしいからやめないか。」
「ロンさんはレイさんなの?」
「うん。」
明希が聞くとロンが頷く。
「レイさんもロンさん好きなのすごい伝わる。」
「ほんとだ、なんか恥ずかしいね。」
恋の言葉にロンが頬を赤く染めた。
「あれ、クレアは誰が番?」
「リヴィさんじゃないのか?」
ふと呟いた明希に、恋が答える。
「よくわかったね?リヴィはいないのに。」
恋はおもわず固まってしまった。
クレアもリヴィに会っているはずだった。
恋が困惑していると、ラズがメモを差し出してきた。
"今のクレアには、僕以外認識できていない。ハンスさんやロンさんも、全くの別人だと思ってる。下にいる他のみんなもそう。だから、クレアにとっては、リヴィさんはリヴィさんじゃない"
「ん、さっき少し話を聞いたんだ。」
「そうだったんだ。」
恋はメモを読むと何事もなかったかのように話を続けた。
「でももうね、リヴィには会えないんだ。」
「そんなことないと思うよ?」
「ううん、会えないの。俺が汚いから。」
これにはハンスやロンも驚きの表情を見せた。
「俺が、汚いから。リヴィとは会っちゃいけないの。他のみんなも多分そうなの。ジル様も、レイも、ロンも、トムも、ハルも、アレンも、ハンスさんも……でもなんで、ラズだけは、会ってくれるのかなぁ……俺は汚いから、会ったらダメなのに。」
クレアのその言葉に、恋の胸はずきりと痛んだ。
昔、よく言われた。
"AV男優なんかやって、汚ねえな"
好きでそんな仕事やってるんじゃないのに。
恋はその度にそう思っていた。
そして赤津は言ってくれた。
"全部受け入れるもんでしょ?"
(あれ、そんなこといつ言われた……?もしかして……これが、半年の間の記憶、なのか?)
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