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episode.86 愛を望んでも
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〜恋side〜
それからは少しの間、お互いの交流を深め、ジルたちは夕方頃に帰って行った。
「……なんだか怒涛の1日でしたね。」
恋はふとそう呟いた。
「全くだな……」
「明希、今日は泊まっていけば?」
「え、でも、別に足もう平気だし……」
「まあ家に帰っても1人じゃないからいいだろうけど……なんか俺が心配。」
「ふはは!恋こそ、足平気かよー!無茶して人1人おぶって帰るとかもう。」
「クレア軽かったし。」
「明希ちゃん泊まるなら着替えとか取ってきてあげるよ?」
木之本がそう言う。
「え、うーん、どうしよう……」
「俺は別に構わないからな。」
赤津が明希に向かって優しくそう言った。
「……じゃあ……泊まりたい、です。」
「んじゃ俺ちょっと荷物取りに行ってきまーす。」
「木之本さんも泊まりますよね?」
「いいの?」
「明希が寂しがりますし。」
恋はそう言ってクスクス笑う。
「な、俺はなんも言ってないですよ!」
「はいはい、じゃあ俺もお言葉に甘えて。」
木之本は笑いながら明希の頭をポフポフと撫でる。
「ご飯の用意しながら待ってますね。結局昼とか食べ損ねましたし。」
「ありがと。じゃあちょっと行ってきます。」
木之本が出て行き、恋は冷蔵庫の中身を見やる。
「……あんまりないですね。まあもともと今日の帰りに買って帰る予定だったしなぁ……」
「なんか買ってこようか?」
「そうですね……さすがに4人分はないです。」
「んじゃ行ってくる。15分くらいで戻るよ。」
「わかりました。」
続いて赤津も出て行き、部屋には明希と恋が残される。
特にやることもない2人はソファに腰掛けた。
「……大丈夫、じゃないよな。」
恋は明希にそう言う。
「……大丈夫、だよ。」
「本当嘘つくの下手くそ。震えてるし。」
「……また、会いに来るって、言われた。」
明希は手を膝の上でぎゅっと握りしめ、震えている。
「……目隠し、されたんだって?」
明希は恋のその問いにこくりと小さく頷く。
「……トラウマ、増えちゃったな……ごめんな、明希。」
「な、んで……恋が、謝ることじゃ、ない。」
「昔も今も……明希のこと守れてない。」
「いつも、助けてくれるのは……恋だよ?それに、今回は翔也さんも赤津さんもいるし……」
「うん……」
「クレア見てたらさ、俺も、愛が欲しいとか……思っちゃった。」
明希はえへへ、と笑いながら言う。
恋にもなんとなくその気持ちはわかった。
「うん……俺も、愛が、欲しい。」
気付いたら、恋はそう口にしていて自分でも驚いた。
「……俺はなに言ってんだろうな。」
「ねぇ、恋。俺たち愛、欲しがってもいいよね……?」
明希は恋に尋ねるというよりは同意を求めるようにそう言ってきた。
「……ダメってことは、ない……よな。」
「翔也さんのこと……ちゃんと、好きで、いいよね?」
「いいに決まってる。」
「……なら、恋も……それでいいんだよ。」
「赤津さんのこと、好きで……いいってこと?」
「うん。さっきも、応援するって言っただろ?」
明希はふふふ、と笑う。
「……俺も、明希のこと応援してるよ。」
「ん、ありがと。」
(愛、愛か……)
"恋、愛してるわよ"
「え……?」
突然恋の脳内に響いた声。
「ぅ……ぁ、あぁ……」
「恋…?どうした?!」
恋は頭に割れそうな痛みを感じ、頭を抱えてうずくまる。
「痛いっ……」
「恋、落ち着け!」
(なんだこれ……?頭が、ズキズキして……)
「恋、恋!」
「……うっ…………ん……?」
その頭痛は突如治り、何事もなかったかのようになる。
「どうしたの?大丈夫……?」
「あぁ、大丈夫……」
(今の何……?さっきの声……母さん?)
恋の記憶のピースは、埋まり始めていた。
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