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episode.138 欲しいもの
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〜恋side〜
「ふぅ……」
恋は家に帰り、部屋に入るとため息をついた。
ベットに腰掛け、目に入ったウサギをぎゅっと抱きしめる。
(こんなに辛いんだなぁ……)
今、赤津は小雪とリビングにいる。
帰ってきてから小雪が赤津にべったりで、見ていられなくなった恋は先に休む、と部屋に来たのだ。
恋はベットに倒れ、ウサギを持ち上げる。
「赤津さん……好き……」
ウサギに赤津の顔が重なり、恋は頬を赤く染める。
「はぁぁぁ……」
今までにない感情に、恋は戸惑っていた。
恋愛などまともにしたこともなく、愛というものも最近やっと思い出したようなもの。
自分が赤津に恋い焦がれ、会いたい、触れたいなどと思うことは、恋にもよくわからなかった。
好きだと口にしてしまえば、それは膨らんでいくばかりで、だが伝える勇気も出ない。
(ウサギになら言えるのになぁ……)
恋はウサギを再び抱きしめる。
そのまま恋は眠気に襲われ、ろくに着替えもせずに深い眠りに落ちていった。
*
〜琉side〜
「んー……ふぁぁぁ……」
小雪に今まで離してもらえず、やっと解放された琉はあくびをしながら部屋の扉を開ける。
「……あ。」
ベットには猫のように丸まり、ウサギを抱えた恋が寝ていた。
(……本当可愛いなぁ。)
琉は恋の頭を優しく撫でる。
恋は思った以上にウサギを気に入ってくれているらしい。
抱えている恋が可愛くて、琉は思わず微笑む。
「ん……」
恋の口から少し漏れる声が、なんとも艶かしくて、琉はため息をつく。
(寝てるやつに欲情するほど欲求不満かよ……)
「……あ、かつさん……」
自分に苦笑していた琉だったが、恋の言葉に驚き、じっと恋を見つめる。
今、確かに恋は自分の名前を呼んだ。
だが、なぜだろうか。
「恋……お前に聞きたいこと、たくさんあるんだからな……?」
事故の前日、恋は意識を飛ばす前に、好き、と言った。
あれはなんだったのか。
今、自分の名前を呼んだのは、なんなのか。
契約がなければ、離れてしまうのか。
聞きたいことは山ほどあるのに、それを聞けない。
恋に記憶がないせいもあるが、琉に勇気がないせいでもある。
「はぁ……恋……」
一体、いくら積めば、恋の心は自分のものになるのだろうか。
そんなことすら考えてしまう。
お金で恋の愛が買えるなら、それでもいいとさえ。
恋の気持ちが、愛が、好きという言葉が欲しかった。
(恋……好きだよ。)
言えない気持ちを、心の中で呟き、琉は恋を着替えさせるべく、腰を上げた。
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