アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
episode.142 お話2
-
〜琉side〜
6月6日
「え、え、ちょっと待って。抱いちゃった?」
翔也はそう言って飲んでいたコーヒーのカップを置く。
「……そう。」
紘は困ったような顔をしながらそう答えた。
「なんでまた。」
翔也の誕生日会の翌日。3人は紘のオフィスに併設されているカフェにいた。
紘が話があるというので琉と翔也が出向いたのだ。
「実は……」
千秋が夢だと勘違いして、好きだ、とか抱いてくれ、だとか言われて、紘も我慢ができなかったらしい。
「……つまり、千秋くんの本心が聞けたと。」
「そうらしい。」
「……そりゃまた、うん、もどかしくなりましたね。」
「はぁ……もう、俺この後我慢できる気がしない。ここ数日一緒に寝てるだけで……もう……」
「あー……千秋くんの様子は、変化ないんですか?」
「少し、俺を見ると照れる。」
「わぁ……可愛いやつだ……」
「もういっそ、俺が現実で気持ちを伝えてしまった方がいいのか?」
「どうでしょう……千秋くんの中で、紘さんはいないことになってますからね……」
琉はそう言う。
「なんか、思い出のこととかありません?2人しか知らない秘密のなんか、とか。」
「思い当たらないな……」
翔也の問いに、紘は首を振った。
「なんとかして声を聞いてもらえればいいんですけど、それも難しいですしね……」
「どうしたら伝わるんだろうか……」
紘はため息をつく。
「待つことしかできないんですかね……」
琉は恋にも記憶がないことを思い、そう言った。
伝えたいことを伝えられないもどかしさは、琉にもよくわかった。
「……正面から向き合うしか、ないのかもな。どんなに時間がかかっても。」
そういう紘の表情は、悲しそうだったが、決意が見られた。
「さて、暗い話はここまでだ。もう一つ話があって呼んだんだ。」
「なんですか?」
「旅行のことだ。具体的な話がしたいと思って。」
「そういえばしてませんでしたね!7月1日にはローデンスに着くようにこっちを出る予定です。」
「2泊3日だったっけ?」
「はい。宿は向こうに着いてから手配しようと思ってます。飛行機のチケットはもう取れてますよ。」
「わかった。それより、邪魔じゃないのか?」
「そんなことないですよ!明希ちゃんはみんなと行きたいみたいですし、イチャイチャならしてきましたし。しようと思えばいくらでもできるし?」
「……盛るなよ。」
「琉には言われたくないね。」
「よく恋の首元に痕が付いているからなぁ……」
「恋が可愛いのが悪い。」
「うわ、理不尽!」
翔也に呆れられ、紘にもクスクス笑われる。
「あ、もうこんな時間か……悪い、もう仕事に戻らないと。」
「いえ、こちらこそ長い時間すいません。」
「旅行楽しみにしてますね!」
「こちらこそ。それじゃあまた。」
紘はカフェを出てオフィスに戻り、琉と翔也も仕事に向かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
172 / 832