アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
episode.143 飛行機
-
〜琉side〜
7月1日早朝6時
「おぇっぷ……」
「恋……大丈夫か?」
「はい……なんとか……」
ローデンスへ向かう飛行機の中で琉は恋の背中をさすっていた。
「あらー……完全に酔っちゃったんだね。」
通路を挟んで隣に座る翔也と明希がこちらを心配そうに眺めてくる。
「前回の旅行の時は、深夜移動で恋寝てたから平気だったけど……本当はすごい乗り物酔いするんだもんね……」
「うぉぇ……」
「大丈夫なのか?」
前に座っている紘と千秋も振り返る。
「大丈夫……うぉえっ……」
「大丈夫じゃないな。」
紘が心配そうにそう言った。
「そんなに乗り物酔いするんなら酔い止め飲めばいいのに。」
「朝飲みました……うぇ……」
「効きにくいのか?ローデンスまであと2時間はあるぞ。」
「うぅ……寝ます……」
「ん、ついたら起こしてやるから寝とけ。」
琉が頭をポンポンと撫でると恋は早くも瞼を閉じた。
「寝るの早いな。」
「酔ってる時はそうなんです。」
「ねー、琉さん……僕も酔ったかも……」
「あーあー、小雪さんも寝たらいいと思うな!!それより琉さん、翔也さんから話があるって!!」
安定飛行に入った機内で明希が突然琉と席を交換しようと引っ張る。
「お、おう?」
琉は不思議に思いながらも明希と席を交換する。
恋の隣に明希がいた方がいいかと思ってのことだ。
翔也はクスクスと笑っているし、小雪はなにやらブスッとしているが、琉はあまり気にしていない。
「んで、話ってなに?」
「え、あー、えーとね。」
明希が翔也に頑張れ、と口パクしてきたことを琉は知る由もなく。
「あ、そうだ、泊まる場所聞いた?」
「え?あ、知らない。」
「ジルの王城に、泊まるから。」
「……はぁ?!」
「なんか、ローデンス国王、つまりジルのお父さんが、俺たちのことジルの友達だって思ってて、連れてきてほしいって言われたんだと。」
「え……え?」
「本当は断るつもりだったらしいんだけど、クレアちゃんとラズくんが、すごく嬉しそうにしてたらしいよ。」
「あー……なんか恋と明希くん、ずっと連絡とってたみたいだし。」
「そうだったんだ。そういうわけで王城にお泊まりします。」
「まじかよ……俺たち一般人だぜ?」
「いや、それはちょっと違うけど……向こうでも顔知れてるらしいから、迎え寄こそうかって言われたんだけど、変装には慣れてるからって断った。」
「ラズくんと千秋くんも仲良くなれるかもな。」
「そうだね……個人的に向こうのΩの子たちと明希ちゃんたちが並んでるのが見たいとか思ってる俺がいるんだけど。」
「わからなくはない。」
琉はみんなが並ぶ姿を想像して、くすりと笑う。
「小動物の塊みたい……」
翔也も同じだったようだ。
「あ、それからみんな日本語覚えたらしいよ。」
「そうなのか。」
「うん。ハルくんが日系移民の末裔なんだって。それでみんなに日本語教えてたとか。」
「へぇ……お前詳しいな。」
「ジルから聞いた。昨日たまたまメールしてさ。」
「そうか。」
「琉とも話したがってたよ。」
「まあ、行ったら話せるだろ。」
琉はこれからのことに胸を弾ませていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
173 / 832