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episode.144 ローデンス
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※「もう一度、僕を呼んで」のepisode.20-2とリンクしています。
〜千秋side〜
「んー!着いたー!!」
「明希ちゃん、あんま離れないでよ。」
「大丈夫ですって!!」
"あ、明希、危ない……"
千秋が明希に伝える間もなく、明希は前から携帯を見ながら歩いてきた男にぶつかられる。
「失礼。大丈夫ですか?」
「え、あ、はい。」
「これは……お美しい方だ。よろしければお茶でもいかがですか?」
千秋は烏沢の家にいたおかげで語学は堪能だ。
読唇でもなにを言っているかくらいわかる。
恋と小雪、ヒロもなにを言っているかわかったようで、苦い顔をする。
翔也が怒ると面倒なことをみんな知っているからだ。
「なぁ、あいつ何言うとるん?」
すでに関西弁になっている翔也。
「俺は英語そこまで得意じゃねえけど……お美しいですって言われてたな。」
琉が翔也にそう説明した。
「へぇ……人の妻口説くってなかなかの精神力やなぁ……」
翔也がそう言って近寄ろうとした時だ。
「あ、すみません、俺、もう結婚してるんです。」
明希がにっこり笑って指輪を見せる。
「これは、失礼。あなたほどの方をもらえる男性は幸せだ。」
男はそんなことを言って去って行った。
「なんなん。あいつなんなん?!」
「へ?あぁ、翔也さんは幸せですって。なんでですかね?」
「……へ?」
翔也は間抜けな声を出す。
「明希ほどの美人をもらえる男性は幸せですねって言われてたんですよ。結婚してるって彼に伝えてたんです。」
明希の代わりに恋がそう説明した。
「……なんか、なんだろ、怒り吹っ飛んだ。」
「翔也は独占欲が強すぎなんだ。この国ではこんなこと日常茶飯事だぞ。だが、明希も千秋も恋も、それから小雪も気をつけたほうがいい。」
「なんで俺たちまで?」
"そうですよ。"
ヒロの言葉に恋と千秋は首をかしげる。
「……天然って怖い。」
「本当それな。」
琉と翔也がそう呟く。
「ともかく、ローデンスは日本のように同性愛に偏見や差別がある国ではない。むしろ当たり前の国だ。気をつけないとすぐ口説かれるぞ。」
千秋と恋は顔を見合わせてまた首を傾げたが、すぐにみんなが歩き出したため、考えるのはやめた。
「王城って空港から近いんだね。」
そういう翔也の目線の先にはやたら大きい建物、ローデンス王城がそびえ立っていた。
「ローデンスは宝石と紅茶が有名な国だ。宝石は一度王城に集められ、選定をしてから他国に出荷する。だから王城と空港は近いんだよ。」
社長であるヒロはローデンスの商社マンとの会談のためにもここにいる。
そのためかローデンスにかなり詳しい。
「ほら、もうすぐ着くぞ。」
王城の門が見えてきて、琉がそう言った。
「どちら様でしょうか?」
「ジル王子と約束をした木之本だけど。」
「お待ちしておりました。ジル様が中で朝食を用意しておりますので、荷物は仕えのものたちに預けて食堂へどうぞ。」
門兵がそう言って門を開けてくれた。
千秋は読唇術が人より優れるため、普通の会話は問題なく読み取れる。
「千秋、荷物もらうよ。」
"ありがとうございます。"
千秋はヒロに荷物を預け、辺りを見回した。
するとそこで小柄な人間が目に入った。
ローデンスには男性しかいないから、それは少年なのだろうが、あまりに美しい顔立ちに、千秋は一瞬少女かと思った。
少年は白っぽいワンピースのようなものを着ていて、なおさら少女のようだった。
千秋は吸い寄せられるようにその少年がいる庭に向かう。
ヒロたちは気づいていないのか中に入っていった。
(動物がいっぱい……)
少年の周りには動物たちが集まっていて、戯れている。
少年の目は深い青色。まるで海のような綺麗な色だったが、どことなく光がなかった。
"誰ですか?"
ふと、少年がこちらに気づき、手話を使ってきた。
(僕と同じ……話せないんだ……)
"聖川千秋。"
"チアキ……レンの、友達?"
(恋を知ってる……?)
"もう君たちが来る時間だったんだ……早く食堂に行った方がいいよ。"
"君は、誰?"
"ラピスラズリ。ラズだよ。"
少年はそれだけ言うと城の中に入ってしまった。
「千秋、探したぞ?」
いつの間にかヒロが隣にいて、そう言ってきた。
"ごめんなさい。今行く。"
千秋はヒロについて城の中に入った。
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