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*06
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〜恋side〜
「んー……」
恋が目を覚ますと、赤津の腕に包まれていた。
(あったか……)
またウトウトと微睡みそうになるが、壁にかかっている時計に目をやる。
時間は6時だった。
いつもこの時間には起きて朝食の支度をしていたから、癖で目が覚めてしまったのだ。
昨晩、結局あの後2回もされて、恋の腰は鈍い痛みに襲われていた。
だがその重い腰を起こして、赤津を起こさないようにそっとベッドを抜ける。
(随分慣れたなぁ……)
これも毎朝のことで、赤津を起こさないようにベットを抜けるのはもうお手の物だった。
貸してもらった部屋着を着なおし、部屋を出て明かりのついているリビングに向かう。
「おはようございます。」
「あら、早いわね!」
リビングには眞弓だけがいて、まだみんな寝ているようだ。
「毎朝この時間なので、目が覚めてしまって……」
「そうなのね。」
眞弓は朝食の準備を始めていた。
「お手伝いしますよ。」
「あら、いいの?」
「はい。できることなら、いくらでもやります。」
「じゃあお願い。」
朝からご飯を炊くようで、野菜の味噌汁や焼き鮭、卵焼きなど、様々なおかずの材料が用意されている。
赤津は朝早い時でもご飯を食べるので、恋が用意するものも毎朝こんな感じだ。
だから見れば何をどうするのかは大体わかる。
恋は手際よく野菜を切り、卵を溶く。
「あら、さすがに手慣れてるわね!琉料理できないでしょ!」
「最近は赤津さんも手伝ってくれますよ。」
「あら、琉のこと名前で呼ばないの?」
「あ、つい癖で……」
「呼んであげたら?喜ぶわよ。」
眞弓はクスクスと笑いながらそう言う。
「それに、ここにいるのはみんな、赤津、だからね。」
「それもそうですね……」
恋は卵を焼きながら、琉、と呼ぶ想像をする。
(……ダメだ恥ずかしい。)
「あら、恋くんの家も出汁の卵焼きなの?」
「あ、俺の家は甘い卵焼きだったんですけど、あか……琉さんは出汁の卵焼きって聞いて、作り方変えました。」
「あらぁ……もうお嫁に来る準備も万端ねぇ。」
眞弓は楽しそうにそう言いながら鮭を焼いている。
恋は顔を真っ赤にした。
「恋くん。琉はね、あぁ見えて、恋愛とかしたことないのよ。だからね、実は私もお父さんも、すごく嬉しいのよ。」
恋は驚いた。
意外だったのだ。
男はともかく、女とは恋愛してきたものだと思っていた。
「一度ね、琉の友達が付き合った女の子が、琉目当てだったみたいでね。それ以来女の子は信じられないんですって。」
「そうなんですか……」
「今では友達くらいはいるみたいだけどね。」
いつも優しく笑いかけてくれる彼の、知らない一面。
知れたことが嬉しいのもあるが、それより、もっと、彼自身が好きだということを、きちんと伝えたいと思った。
「だから、琉がこうして、大切な子だって、人を連れてきてくれるのはとても嬉しいのよ。奏や煌も、きっと嬉しがってるわ。」
眞弓はそう言って柔らかく微笑んだ。
「恋くん、これからよろしくね。」
「いえ、こちらこそ!その……俺は、皆さんの期待に応えられるような人間じゃないですけど……」
「あら、もしかしていろんなこと気にしてるのかしら?ごめんね、話は聞いたわよ?」
琉は思ったより、自分のことをしっかり考えてくれているらしい。
家族にも話をしてくれたようだ。
「そんなこと気にしなくていいのよ?過去は過去だし、悪いことをしていたわけでもないんだし。それに、ちゃんと琉を好きでいてくれてるんでしょ?」
「もちろんです。」
「うん、それならそれでいいのよ。」
そのあとは幼少期の琉の話をしてくれた。
小さい頃は泣き虫で、幼稚園に行くにも泣いていたらしい。
翔也と会ったのは俳優を始めてかららしいが、今では家族ぐるみの付き合いなのだとか。
「さて、そろそろみんなが起きてくるかしら。」
時間は7時。
琉も休みでもこのくらいには起きてくる。
「おはよう。」
隆文はすでにスーツで、出勤の用意を終えてからリビングに来るらしい。
「んぅー……おはよぅ……」
煌はまだ眠たげで、パジャマのままだ。
「おはよう。」
「おはよう恋さん!」
琉と奏はもうしっかり起きていて、琉は恋を見て微笑み、奏もなぜか恋指定で挨拶をしてきた。
「おはようございます。」
恋はみんなに向かって挨拶を返す。
「恋さんが朝食作ったの?」
奏がそう言ってキラキラと目を輝かせる。
「手伝ってくれたのよ。」
「ほう……美味しそうな卵焼きだな。」
琉がふわふわの卵焼きが好きなため、恋も卵焼きの腕を上げた。
それを見た隆文が柔らかく微笑む。
「「いただきます。」」
食卓につき、全員手をあわせる。
「……う、うまいっ!!」
「ほんとだ……母さんと差ない!!」
奏と煌は興奮した様子でそう言う。
「琉はこの料理に胃袋を掴まれたわけだ。」
「いかにも料理につられたみたいな言い方すんなよ……」
隆文の言い方に琉は苦笑いだ。
「料理と体の相性?」
琉は奏の言葉に味噌汁にむせる。
「っおい!奏!!」
「何、冗談じゃん。」
奏はクスクスと笑う。
「悪戯もほどほどになさいね。」
「はぁい。」
眞弓に止められ、奏は仕方なく、といった感じで黙った。
「それにしてもうまいな。料理は得意なのかい?」
「どうでしょう……?ある程度は作れますが……」
隆文に聞かれ、恋は曖昧に答えた。
恋は料理のレパートリーこそ多いものの、そこまで自信はない。
「恋は料理うまいよ。」
「手際よかったもの。毎日作ってるのがよくわかるわ。琉、あんたも少しは覚えなさいね。」
「覚えたよ!」
眞弓の言葉に琉が反論する。
「はっはっは!母さんがうまいから私も料理は大してできないしな。いいんじゃないか?」
「いやだから、覚えたってば。」
「でもどうせ恋さんが毎回作ってるんでしょ?」
「うぐ……」
賑やかな食卓。
恋には今まで無縁なものだった。
両親が亡くなってから、こうして大人数で食卓を囲むことはなく。
最近やっと、明希や翔也、千秋、紘などと食卓を囲むことが増えたものの、大体は琉と2人。
それも楽しいものであったが、こうして大人数で食卓を囲むのは、心が温かくなった。
「恋?なにニコニコしてんの?」
「なんか……すごく幸せです。」
琉に不思議そうに見つめられた恋はそう言って柔らかく笑った。
「……いつでもいらっしゃい。ね、お父さん。」
「そうだな、俺たちも恋くんの親になりたいな。」
眞弓と隆文にそう言われて、恋の頬には涙が伝った。
「あれ……どうして……」
恋は涙を拭う。
拭っても拭っても溢れて止まらない。
恋を優しく撫でる琉の手が、温かく心地よい。
「いつでも、来ればいい。いつでも待っているよ。」
「そうね、もう、家族だものね。」
「兄さんじゃ頼りないかもしんないけど、こう見えてちゃんとしてる人だし。」
「琉兄さんもやっとお嫁さん見つけたのかぁ!」
「おいおい、なにをいろいろ勝手に……」
琉は困ったように頭をかく。
「っあー!もう!!恋!」
琉は恋の方を向く。
一体どうしたのだろうか?
「……結婚しよう。」
「え……?」
衝撃の公開プロポーズに、奏と煌がお箸を落としたのも無理はないだろう。
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