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〜恋side〜
10月15日 7時
結局昨晩も、ほとんど眠れずに夜が明けた。
秋休みとして、しばらく仕事が休みなのが幸いだった。
だが、頭は痛いし、体は重い。ふとした時に泣いているせいで瞼も腫れて重たかった。
そっと体を起こして下に行くが、いつもならまだいるはずの琉の姿はなく、もう家を出たらしかった。
「琉さん…」
広い、静かな家に、恋の呟きがやたら大きく聞こえる。
たった2日、触れていないだけで、琉の温もりがこれほどまでに恋しい。
優しく抱きしめてもらいたくて、頭を撫でてもらいたくて
それなのに怖い。
この矛盾した気持ちを、どうしていいかわからない。
どうしようもなくなって、玄関にしゃがみ込む。
膝を抱えて顔を埋める。
そうしているといくらか気が紛れた。
さすがに何か食べないと、と思い、おかゆを作ったが、あまり食べられなかった。
琉が帰ってきたら、すぐに会いたい。
その思いから、また玄関にしゃがみ込むと、膝を抱えた。
何時間かそうしていると、急に眠気が襲ってきて、恋はそのまま眠ってしまった。
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〜琉side〜
15時
「ただいま。」
撮影が早く終わり、帰宅すると恋が玄関にしゃがみ込んでいた。
「…恋?」
声をかけてみるが、眠っているらしく、起きる気配もない。
「…体冷えてるじゃん…」
一体何時間、ここにしゃがんでいたのか、恋の体はひんやりと冷たかった。
恋を抱き上げ、2階に上がる。
「…や…やっ……やだっ…やだ!」
うなされているのか、恋は眉間にしわを寄せ、か細い声を上げる。
「大丈夫、大丈夫だよ。恋。大丈夫。」
「っ…りゅ…さん…ひとりは…やだ…すてないで…」
「っ…恋…」
ベットにそっと寝かせて布団をかけてやる。
そのまま優しく頭を撫でてやると、少しだけ表情が和らいだ。
琉に置いていかれる夢でも見たのだろうか。
捨てないで、と口にしていた。
「…ひとりにしないよ。ずっと、そばにいるから。」
眠っている恋にそう呟き、額にそっとキスをする。
ひとりにすることなんて、ありえないのに。
今の恋は何もかも不安なのだろうか。
起きたら、抱きしめてやりたい。
俺はそばにいるよ、とそう言ってやりたい。
琉はそう思った。
しばらく頭を撫でていたが、空いていた琉の手を恋が控えめに握ってきた。
その表情は寝ているというのに、不安げだった。
手をしっかり握ってやり、幼子をあやすように、トン、トン、と優しく胸元を叩いてやる。
だんだん表情が柔らかくなり、安心したようにすー、すー、と寝息を立て始めた。
琉は恋の手を握ったまま、ベットに突っ伏して、ウトウトと微睡むうちに、いつの間にか眠りに落ちていった。
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