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〜貴也side〜
「そ、奏さんっ?!」
突然目の前に現れた奏に、貴也は驚く。
「俺今着いたところ!見つけたから来ちゃった。俯いてたけど、具合でも悪い?」
奏の身長は180cmあり、対する貴也はまだ160cm。
腰をかがめて覗き込まれると、顔が熱くなった。
「だ、大丈夫です!!」
「じゃあ行こっか。映画、何か見たいのあった?」
「いえ、特には…」
これは嘘だ。
本当は今やっているホラー映画が見たくてたまらないのだが、可愛い受けはホラー映画を怖がるものだ。
貴也はそういったことを全く怖いと思わない。
可愛い、とは程遠いと自分でも思う。
「じゃあ俺が決めたのでいい?」
「はい!」
「電車乗るから、交通費だけは自分で出してね。あとは全部俺が払うから。」
「えっ!!」
「さすがに中学生にいろいろ払わせるのはちょっとねー。俺今日は少し余裕あるから。」
そう言って微笑み、頭をなでられる。
「わわわ!俺子供じゃないですよ!」
「ははは!そうだね!」
ぷぅっと頬を膨らませてみると、 奏がクスクス笑う。
「さて、行くよー。」
さりげなく手を掴まれ、ICカードを使って改札を通過する。
(ててててて、手つないじゃってる!!)
散々BL漫画で見てきた展開に、自分が置かれているという状況に、興奮が隠せない。
それも相手は、自分が大好きな奏だ。
電車に乗っている間も、ドキドキが止まらない。
隣に座っているのが奏だと思うだけで緊張する。
「そ、奏さん…映画、何見るんですか?」
「んー、ホラー見ようかなって。」
そう言われて、思わず嬉しくなる。
「ホラー、ですか?」
「苦手?」
「いえ!!」
これは強がりでもなんでもない。ホラーは大好きだ。
「ふぅん?まあ怖かったら言ってよ。」
奏は意地の悪い笑顔を浮かべている。
漫画の世界なら、ここで受けさんがビクビクしているはずだが、貴也はそれはない。
ただ、奏はSか…と確信する。
妄想で鍛えたBL脳は思った以上に働いてくれる。
「よし、降りるよー。」
目的地に着き、電車を降りると手を繋がれる。
「えっ、あの…」
「迷子になったら困るからね。」
そう言って笑われた。
子供じゃない、と言いたいが、繋がれた手が嬉しくて、黙っておく。
「高校生一枚と中学生一枚。」
チケットを購入し、映画館に入る。
最初の宣言通り、奏がササっと支払いを済ませてしまった。
「ポップコーン好き?」
「はい!」
「何が好き?」
「キャラメル!」
「飲み物は?」
「カルピス!」
「お子ちゃまだなぁ。」
クスクス笑いながらもキャラメルのポップコーンと、カルピスを注文してくれる奏は優しい。
「あの、さすがに飲み物くらい払います。」
そう言って財布を出そうとした貴也の手を、奏は止める。
「だーめ。今日は俺持ちなの。黙って年上に甘えてなさい。」
そう言って甘い笑顔を浮かべられて、あまりのかっこよさにクラクラとする。
奏と貴也がいるところに、自然と視線が集まり、そのほとんどは奏に向いている。
「ポップコーン少し食べる?」
映画まで待つ間、ロビーのソファに座っているときも、視線が奏に向けられている。
「はい。」
差し出されたポップコーンを口に運ぶと、甘くて幸せな気分になる。
「んー…おいひぃー…」
もぐもぐしながら幸せに浸っていると、奏の顔が近づいてきてどアップになる。
「ふえっ、え?え?!」
「ふふっ、ついてるよ。」
クイッと口元を親指で拭われ、ボッと顔が熱くなる。
周りからキャァという悲鳴が聞こえていたが、貴也の耳には全く入っていない。
「もう、本当子供だね。」
なんだか馬鹿にされたようでムッとする。
すると耳元に口を近づけられた。
「そういうところも可愛い。みんなに見せたくないくらい。」
「ほぁっ?!」
あまりに焦って、間抜けな声が出る。
もちろん周りはまた色めき立っていたが、貴也は恥ずかしさからそれどころではない。
「あ、そろそろだね。行こっか。」
奏に連れられて、真っ赤な顔を俯かせたまま、貴也はシアタールームに入って行った。
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