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〜貴也side〜
「んーっ!おいしいー!」
口の中に広がるトマトのパスタに貴也の頬が緩む。
「はぁー幸せぇ…」
目の前に大好きな奏がいて、一緒に食事をしていることが幸せで、つい口からそうこぼれ出た。
「よかった。楽しそうで。」
「楽しいに決まってます!」
好きな人とのデートが楽しくないわけない。
「なんか最初、落ち込んでるみたいだったから。心配してたよ。」
「あ…」
それは、奏の隣に自分のような子供がいていいのか、という疑問からだった。
「…奏さんは、俺なんかと出かけて楽しいですか?」
「楽しいよ。当たり前じゃん。」
「でも…俺、子供だし、可愛い女の子でもないし…」
「なんだ、そんなことかぁ。俺が嫌われてるのかと思ったじゃん。」
「へ?」
奏の言葉がよくわからず、間抜けな声が出る。
「貴也くんは中学生で確かに子供かもしれないけど、でもいちいちウブな反応も可愛いし、俺は女の子と歩くより貴也くんと歩く方が嬉しいよ。」
「ほわっ?!」
予想していなかった言葉に、自分でもよくわからない声を出してしまった。
「だって俺はさ、貴也くんがいいんだもん。」
「ーーーッ!」
みるみるうちに顔に熱が集中し、全身が真っ赤になるんじゃないかと思うほど体が熱くなる。
恥ずかしい。
嬉しい。
二つの感情がぐるぐると貴也の中を渦巻く。
「ね、貴也くん。」
しばらく無言で食べ進め、ほとんど食べ終わった時、奏が持っていたシルバーがカチャン、と音を立てて置かれる。
「俺、貴也くんが好きだよ。」
「へ………?」
言葉の意味が、理解できない。
それは、そうだ、弟のような存在として、だよな。
そう自分に言い聞かせて落ち着こうとするが、心臓がばくばくとなり、胸の高鳴りがおさまらない。
「俺は、貴也くんと手を繋いだり、キスをしたり、ゆくゆくはエッチもしたいと思う。俺の好きはそういう好き、だよ。」
(な、な、なぁぁぁぁ?!)
声にならない絶叫が心の中で響く。
現実の貴也は握っていたシルバーを落とした。
「貴也くんは、俺のことどう思ってる?」
優しい顔でそう言われて、ドキドキする。
きちんと言わないと、そう思うのに、言葉が出てこない。
「お、お、俺も…そ、そ、奏さんが、す、す…」
「失礼します。」
「ひゃいっ?!」
言い終わる前に店員がやってきて、落としたシルバーを交換してくれて、アフターで頼んでいたデザートを置いていく。
完全に言うタイミングを逃してしまった。
「デザート食べな。」
奏は優しく笑って、貴也にそう言ってくれる。
貴也は目の前にあるアイスティラミスを口に運んで、俯く。
(ちゃんと、好きって言いたい…)
「そ、うさん…すき…」
それはレストランの喧騒にかき消されてしまいそうな小さな声で、俯いていて奏の顔もまともに見れなかったが、貴也は確かにそう言った。
「うん。ありがとう。」
パッと顔を上げると、綺麗な笑顔を浮かべている奏と目があう。
恥ずかしくなってまた俯く。
「あー、ほんと嬉しい。もし嫌だって言われたらどうしようかと思った。それでも離してあげられる自信ないよ。」
奏は心底安心した、という風にそう言う。
「これからもっと2人で出かけたりしようね。」
「はわぁぁ…」
「ん?」
「もう…そんなの…嬉しすぎて死んじゃいます…」
顔を真っ赤にして貴也がそう言うと、奏は目を丸くして、ふぅ、とため息をついた。
「俺、いつまで我慢できるかな…」
そしてそう呟いたのだが、貴也にはそれは聞こえていなかった。
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