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〜明希side〜
恋の家から帰った明希は、1日中何をやるにも集中できず、早めに入浴を済ませて、今はノロノロと夕食を作っていた。
「はぁ…」
今日何度目かもわからない大きなため息をついて、トン、トン、ときゅうりを切る。
翔也の好きなポテトサラダと、トンカツを作っていた。
「…った…」
ぼーっとしながらきゅうりを切っていたせいか、指を切ってしまった。
明希はまたため息をついて、絆創膏を貼る。
その後、なんとか夕食を作り終えた時には、手が傷だらけになっていた。
火傷はするわ、切り傷は増やすわでもう散々だ。
「ただいまー。」
翔也の明るい声が聞こえて、明希はハッとした。
暗い顔をしているのはまずい。
「おかえりなさい。」
精一杯、ニコッと笑う。
いつも通り、できただろうか。
「ただいま…って、どうしたの?」
いつも通り、とはいかないようだ。
「目真っ赤。腫れてる。泣いた?」
すぐに明希の方に寄ってきて、顔を覗き込む翔也に、また涙が溢れそうになるのを必死にこらえる。
「ちょっと、感動する映画見て、ボロボロ泣いちゃいました。」
「そうなの?それならいいけど…って、この手はなに?!どうしたのこれ?!」
翔也は、バッ!と明希の手を掴んで、叫ぶ。
「火傷したなら冷やさなきゃ!」
そう言って明希の手をグイッと引いて流水にさらす。
「具合悪い?」
「…ちょっと、ぼーっとしちゃって…」
「熱でもあるかな?もう、具合悪いなら無理してご飯作らなくていいのに。痛かったでしょ?こんなに指切って…」
優しい手つきで明希の手を撫でる翔也の手が、少し冷たくて、外は寒かったことがわかる。
「あの、俺は大丈夫ですから…翔也さんお風呂…」
「先にご飯食べるよ。せっかく出来たてだし、冷めたらもったいない。明希ちゃんは食べたら早く寝なよ?」
そう言って頭を撫でてくれる。
いつものことなのに、また泣きそうになる。
「ほら、座って食べよう。」
「はい。」
「お、ポテトサラダだー。」
ニコニコと嬉しそうに笑う翔也を見ていると、ますます涙が溢れそうになって、明希はぐっと唇を噛み締めた。
「…やっぱりなんかあった?」
「…っ…ちょっと、調子悪くて…」
「ご飯、やめる?おかゆ作ろうか?」
翔也は料理が苦手なくせに、明希が具合が悪いとなれば、スマホで必死に検索をして料理を作る。
ずっとそばにいて、看病してくれる。
「食べないで、寝ます…」
「そっか。お風呂は入った?」
「はい…」
「熱は…なさそうだなぁ。」
明希の額に自分の額をくっつけて、そう言う翔也。
「よし、じゃあベット行こうか。」
「えっ、翔也さんは先にご飯…」
「いいよー。明希ちゃん寝てから食べるから。」
「でも…」
「いいの。ほら、行こう。」
さっきは冷めたらもったいない、と言っていたのに、明希が具合が悪ければそれを後に回す。
翔也はどこまでも、明希優先だ。
ベットに入ると、布団を上まで掛けてくれて、翔也がベットのすぐそばに腰掛ける。
「おやすみ。」
「…おやすみなさい…」
優しく頭を撫でられて、目を閉じる。
そのまましばらく、頭を撫でて、手を握ってくれているのを感じながら、明希は次第に、眠りに落ちていった。
眠っている時に、涙をこぼした明希を見て、翔也はため息をつく。
「…やっぱり、何かあったんだなぁ…」
そっと明希の涙を拭って、翔也は寝室を出た。
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