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〜翔也side〜
5月25日
あのパーティーから2週間ほどが経った。
翔也の仕事はめっきり減った。
「翔也さん…」
「ん?どうしたの?」
「やっぱりあれのせいですよね…?」
「なにが?」
「翔也さんの仕事が減っちゃったの…」
「そんな顔しないで。」
明希は俯いて、泣きそうになっている。
翔也の今の仕事は、撮影中だったドラマだけで、そのほかのテレビ撮影は急になくなったり、オファーが来なくなったりしている。
山之内が何かを言っている可能性が高いが、翔也は後悔していない。
「やっぱり謝ったほうが…」
「俺は間違ったこと言ったつもりはないし、あれは俺の本心だし。だから謝らない。明希ちゃんがそんな風に気にすることじゃないよ。」
明希を優しく抱きしめて、頭を撫でる。
「大丈夫。だってなにも悪いことしてないんだから。」
幸いにも貯金はあるし、しばらく仕事がなくてもやっていけるとは思う。
それに、悪いことをしているわけではないのだから、堂々としていればいいと、翔也は思っている。
だが、明希は心配そうだった。
「明希ちゃん。俺ね、明希ちゃんが思ってるより、ずっとずっと、明希ちゃんと会えて良かったと思ってるし、明希ちゃんを守りたいと思ってる。」
「…うん…」
「あのカフェのマスターから聞いたでしょ?俺の昔の話。」
「はい…」
「明希ちゃんに会って、最初の方とかはまだセフレいたんだよ。全部どうでもいいと思ってた。でも今は違う。俺は明希ちゃんに傷ついて欲しくないし、明希ちゃんを守りたい。」
明希が、抱きつく腕を強くする。
「だから、俺はこの前の山之内さんが許せなかったし、あんな風に言ったことは後悔してない。もしもこれで、役者人生終わったとしても、俺はそれでいい。だって明希ちゃんは、俳優の俺を見てるわけじゃないでしょ?」
そう言うと、明希はコクコクと頷く。
「俳優の翔也さんも、もちろん大好きだけど…翔也さんは、翔也さんだから…」
(こういう子だから、好きになったんだもん。)
翔也はふっ、と微笑む。
「だからそんなに自分を責めないで。」
「翔也さん…ありがとう…」
「俺の可愛い奥さんだからね!いじめるやつは誰でも許さないよ。」
そう言って笑えば、明希も笑った。
「んー、でも俳優やめたら職探ししなきゃ。なにして働こうかなぁ。」
「ふふ…翔也さんならどこ行っても人気になりそうです。」
「そう?恋くんの職場にでも頼ろうかな。」
「えっ…それならキッチンは絶対ダメですよ?」
「え、なんで?」
「翔也さん、料理は苦手でしょ…」
「えー、ああいうお店なら俺でもできそうじゃない?」
「わかんないです…」
クスクスと笑う明希。
翔也は本当に、料理はてんでダメなのだが、本人にはそこまで自覚がない。
「そんなに俺って料理ダメ?」
「危ない…かなぁ…」
「じゃあお義父さんに頼んで、UHにでも勤めるか!紘さんに頼んで烏沢でもいいね。」
「翔也さんがサラリーマン?」
「まあ、そうなるね。コネ入社は嫌だから、試験みたいなのはちゃんと受けたいけど!」
「ふふ、サラリーマン…スーツ似合いますもんね。」
「パソコンも使えるよ?!」
「あはは!誰もスーツだけなんて言ってないです。」
明希が、心底楽しそうにクスクスと笑う。
それを見て、翔也はホッとした。
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