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愛の巣で捨て犬血迷う
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カクン・・・カクン
渡辺が落ちた。久しぶりに武本さんと飯塚さんに会ったせいではしゃいだのか、いつもよりピッチが速かった。不味いなと心配していたら案の定。今晩は復活することはないから、これを担いで帰る羽目になる。
「ちょっと転がしておきます。」
「水飲ませる?」
「こいつすぐ寝るんですよ。」
それにしても、この二人は酔った様子がない。お洒落なワイングラス(あの無駄にデカイやつ)で飲んでいるかと思いきや、足のないグラスがお気に入りらしい。
「そのグラス、ペアですか?」
「これか?北川・・・店のスタッフからのプレゼントだ。」
「へえ~」
気に入って揃えたなんて言われたら返事に困るのでプレゼントと聞いて安心する。あれ?北川?そんな人いたっけ?さっき武本さんが言ったのは、ミエ?ナミ?いや違うな・・・あとアのつく人がいたような。アルコールに浸かった脳が記憶を曖昧にしている。引っ掛ったけど、思い出せそうにないので諦める。
「そういえば、一課と統合になってその後どお?」
「最初に聞いたときは愕然としましたけど。組織の枠組みは変わっても仕事の内容は変わりませんからね。今の所大きな混乱もなく、どうにかなっています。笹川チーフが上手く動いてくれているし。」
「組織ってそんなものだよな。俺と衛がいなくても影響ないだろ?」
「ありますって。」
「でも回ってるだろ?そうじゃないと退職者がでるたび企業はアップアップになっちゃうし。それでいくと、今俺達がいる職場は自分の代わりはいないって自信を持てるんだよね。拘束時間が長いし、給料も目減りした。でも精神衛生上すこぶるいいよ。」
「やっぱ減りましたか。」
「減ったね。でも使う金額も少なくなった。スーツはいらないし制服着ているから必要なのは私服だけ。休みは月に4日しかないから出かけるったって機会が少ない。使う場所がないわけよ。ひたすらワイン買ってるね。」
ワインですか。それだけ飲めば買い足していかないと無くなるでしょうね。
「武本さんの言ったことが正しいとしたら、俺の代わりはいくらでもいるってことになりませんか?じゃあ何のために仕事しているんだという疑問が・・・。」
「ん~そうだな、存在感かな。」
「存在感・・・ですか?」
「営業の石川って言えば「ああ~あの男ね。」って誰もが知っている存在になればいい。一緒にいるとワクワクするようなさ。自然と人が集まってくるっていうのかな。」
俺にとってはそれ武本さんなんだけどな。飯塚さんは俺達の会話に口を挟むことなく聞いている。武本さんのグラスが空になればワインを注ぎ、つまみがなくなれば取り分ける。あまりに自然-これいつもやっているってことだよね。飯塚さんみたいな存在感が武器みたいな人に面倒みさせている武本さん。やっぱり武本さんが一番すごい。
「飯塚さんを召使にしている武本さんこそが存在感ですよ!」
あれ?俺の日本語おかしくないか?
ワインなんか飲んだら渡辺の二の舞になるからひたすらビール。アルコール5%とはいえ、酒は酒。ビールはぬるくなる前に飲まないと美味しくない。泡が無くなる前にグラスを空にすれば、あっと言う間に注がれてしまう、だから飲む。これの繰り返し。
「衛、召使だってさ。」
「何とでも言え。理だけじゃないぞ?石川のグラスだって俺が面倒を見ているしな。」
「あわわわ、すいません。」
「気にするな、客だろ?」
そして必殺の微笑みを投げつけられて俺にグサグサ刺さった。俺が客ならこの笑顔で契約書にサインしてしまうだろう。恐るべし存在感・・・。
「武本さんと飯塚さんが女だったら、俺は武本さんがいいですね。」
まずい、俺の酔払い脳は精査するまえに声にしてしまう状態だ。セイサ?ええと精査・・・ええと。ボヤンと考えている俺に飯塚さんがギロリとした視線を向けた。
コ・・・コワイ。整っているだけに凄みが果てしない(また日本語が変だよね)
「こ・・・好みの問題なので他意はありません。」
「理が好みってことだな?」
で・・ですから、コワイですって。なんでそんな低音ボイスなんですか!俺間違った?好みは飯塚さんですって言えばよかった?
「わかりましたよ、飯塚さんが好みです。ゴージャス美人になりそうです!」
「へえ~衛が好みなんだ、石川は。」
ひええええ!半笑いの武本さんがこんなに恐ろしいとは知りませんでした!ええ?なに?俺どこ間違った?えええ?
「好みの話は忘れてください。僕の好みは今付き合っている彼女です!これでいいですか?」
「つまらない冗談言いやがって。」
グサっと刺さる低音ボイス。種類の違う男前二人に凄まれて頭痛がしてきた。飲みすぎて頭痛いのかな。色々わからなくなってきた。
話題を変えよう・・・話題。
「ああ!そうですよ。武本さん彼女さんはお元気ですか?」
「はあ?」
「飯塚さんが会った事あるって。渡辺から聞きましたよ。」
「へえ~そんな事言ったんだ、衛。」
「・・・シチュー持参で乗り込む前だ。あの頃の俺の状態知ってるだろ。」
「ヘタレの頃だな。あれはあれでいいけどね。」
全然ついていけない。飯塚さんの状態?シチュー持参って何ですか。ヘタレ?飯塚さんが?ひと睨みで何でも解決できそうなのに?ヘタレ?
よくわからないので放置しよう。
「武本さんの彼女さん、どんな人ですか?」
「そうだな、一言で言うと男前かな。」
「ですよね!やっぱり武本さんと一緒に居られるのはカワイイだけの女じゃダメですよね。男前か・・・格好いい大人の女性かな。年上ですか?」
「いや、違うよ。」
ちょっと残念。素敵な大人女子のイメージだったのに。
「飯塚さんの彼女さんは、どんな人ですか?」
「優しい、清潔感があって柔らかい。人を和ませる。」
柔らかい・・・何気にエロくないですか?
「優しいって大事だよね。俺の相手も優しいけど、特に気に入っているのが俺にだけ優しいところかな。」
「俺にだけ!ポイント高い!それ理想!」
「おまけに料理上手だ。」
男前で武本さんにだけ優しくて料理上手。そんじょそこらの女には太刀打ちできないね。
「何でも器用にできるくせに料理だけはできない。」
お、負けじと飯塚さんも参戦。惚気合戦開幕!もったいないことしたな、渡辺。こんな絶好の機会を逃すなんて。
「じゃあ飯塚さんが料理担当ですか?」
「そうだな。作り甲斐があるぞ、ものすごく美味しい顔をして食べる。」
「そりゃそうですよ、美味しいですからね。羨ましいな・・・プロのおもてなしが当たり前なんて。」
「俺が悩んでいたら話すまでじっと待ってくれる。そしてちゃんと聞いてくれていつも的確な言葉をくれるんだよね。何度救われたことか。」
「男前彼女さんはカウンセラーですか?」
「違うけど、ある意味癒しの職業だよ。」
癒しの職業?今の俺の思考レベルではマッサージ師しか思いつかない。ピンクの整体制服で「カチカチですね・・・ここ痛いです?」なんて男前な素敵女子に身体中をモミモミ・・・いかん、変な所にいってしまいそうになった。
「とても素敵な家族に囲まれている。」
「ええ!飯塚さんはもう親にご挨拶済みですか!」
「挨拶・・・肩苦しいものではないけどな。実家に何度か行かせてもらった。」
おおお~もしかして飯塚さんは秒読み?武本さんは?と聞こうかと思ったけどやめた。これって微妙な所だから不用意な詮索はやめておこう。
「ものすごく俺のこと想ってくれるし大事にしてくれる。だから身も心も大満足。」
ピンク制服の整体師さんが身も心も癒す・・・整体ベッド・・・いやいかん!やめろ俺!チープなAVと一緒にしてはいけない。俺の武本さんを穢してどうする。俺の・・・武本さん?脳みそ酔払い度がMAXに近い、まずい。
「恥ずかしがるくせに、時に大胆になるから退屈とは無縁だ。」
「飯塚さん!それ男のロマンじゃないですか!」
「ロマンは大げさだろう。一緒にいられて幸せだと毎日噛みしめている。」
飯塚さんが「幸せだな~」って?誰だっけ「ぼかぁ~しあわせだな~~」ってセリフ言って歌いだす人。誰だったっけな。
「毎日が嬉しい。」
「武本さん!それ可愛いすぎませんか!」
「石川、可愛いって言ったか?」
「・・・飯塚さん、怖いですって。」
ピンクの整体師さんに「俺、毎日が嬉しい。」とにっこりする武本さん。そんなこと言われたら、もう整体なんか放り出して押し倒・・・だからダメだって、やめろ~~!俺。
「何はともあれ俺達はうまくいっているということだ。」
「そういうことになるな、衛。」
惚気合戦を聞いていたら彼女の顔が見たくなってきた。8:30すぎだしそろそろ帰ったほうがいい。明日は定休日開けの出勤だから色々準備があるだろうし。
ん?あれ?
「ちょっと!武本さんと飯塚さん!惚気合戦で盛り上がっちゃったかもですが、二人の距離近すぎですよ!いくら仲良しルームシェアでも近距離すぎます。男前のピンク彼女と柔らかい彼女に怒られますよ?」
「は?ピンク彼女?」
「柔らかいとは言ったが、前後を端折りすぎだ!」
もうこれ以上はダメだ。ボロがでるようなことしか言えない気がする。それに・・・これ以上『ピンク女子のあぶないマッサージ店』のイメージに憑りつかれたら、色々不味いことになる。武本さんの彼女をイメージしてムラムラなんてバレたら、半殺しにされてしまう。怒るとこわいから、この人。
「ああ・・・えええと、宴もたけなわですが明日に備えてそろそろ帰ろうかと。」
「そっか。」
「お~い、渡辺!起きろ!帰るぞ!」
見送りは遠慮して渡辺を担いでエレベーターに乗り込んだ。なんだろ、色々見落としているような気がする。でもそれが何だかわからない。これはしばらく「てもみん」に行けないな。女性スタッフを見たらイケない妄想がスタートしてしまいそう。
渡辺をタクシーに突っ込んで、彼女の所にいこう。え~今から?なんて言われそうだけど、今の俺は色々収まりがつかない!
ピンク女子の整体師、癒しのマッサージ・・・清潔で柔らかい・・・モミモミ
があああああ!!
慌ててスマホを取りだしてサクサク画面をタップ。
「あ~俺。あのさ、これからそっち行っていい?」
おしまいww
・・・・・・・・・・・・・
葵衣 理一さんのリクエスト後半戦です。
お仕事モードの話と飯塚がリークした理の本命。そのあたりを盛り込んでみましたww
石川君が癒しの整体師に脳を乗っ取られたせいで、セーフでしたね、お二人さん!!
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