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其の八
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鷹仁様。
僕は、雪の降り積もる夜に20を迎えました。
鷹仁様は、桜の美しい時期に、30になられたのですよね。母屋の、お祝いの楽しい様子がこちらにも聞こえました。
息子は、美しい紅葉の時期に、4つになりますね。きっとそろそろ腕白の盛りでしょう。
「来年は…七五三ですね」
お宮参り、お食い初め、七五三。
他にも色々行事はありますが、今までもこれからも、僕が息子の成長を感じられる時は来ないのでしょうね。
「名も知らぬ息子なのに、寂しいものですね」
そう、ひとりごちて、どうしようもないと目線を下にする…と、綺麗に切られた白桃が目に入りました。
「そうだ、」
この贈り物の主に、お礼を言いましょう。
そしてあわよくば、お話相手になっていただきたいのです。
思い立ったが吉日、すぐに侍女に紙と筆を用意してもらいます。
ああ、お手紙なんて久しいので、手が震えてしまいます。
そう言えば遠い昔、鷹仁様に、字が綺麗と褒められたこともありました。
鷹仁様の方が、ずっとずっと美しい文字なのに。
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