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3.渡良瀬先生2
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「渡良……」
ネットワークAの再試を終え、教室に戻る。手応えは充分あった。それを報告しようと渡良瀬を呼ぼうとしたが、俺は信じられない光景を目にして絶句した。
「渡良瀬?、こないだの課題の最後の問題なんだけどさ?」
「渡良瀬先生っ、俺のことも助けてください!」
渡良瀬の前に人だかりができているのだ。集まっているのは俺みたいな勉強のできない、チャラチャラした奴らばかりで、渡良瀬はビビって普段以上に挙動不審になっている。たぶんあいつらも俺と同じ立場で、渡良瀬に教えを請うつもりなのだろう。だが、端から見ればいじめの光景にしか見えない。
「あの、僕、これから安藤さんと……」
渡良瀬のだいぶ控えめな断り方では下がる様子もない。しつこい奴らだ。これじゃ、渡良瀬を最初に予約していた俺が教われない。
「どの教師がいくら言っても勉強しない安藤さんに勉強を教えられるお前の腕前を俺は買ったんだ」
「5分でもいいから頼む」
「安藤なんかより俺に教えるほうが楽だぞ」
他学科の3年らしい糞生意気なチビはそう言って、渡良瀬の腕を掴み、自分のクラスに連れ去ろうとする。
こいつが1番癪に障る。だいたい、留年生といえど年上の俺を呼び捨てだぞ!?
「お前に教えるほうがストレス溜まりそうだけどな」
頭にきて、俺はそいつの後ろに立ってそう言い放った。
「えっ……あ……じょ、冗談ですっ!」
チビは渡良瀬から手を放して一目散に駆け出す。チビでビビりだとは、雑魚臭さだけは褒めてやってもよさそうだ。
他の奴らも俺を見てさりげなく逃げていった。
さて、これで俺が安心して渡良瀬先生から個人授業を受けることができる。
なのに渡良瀬は、よりによってあの糞チビを呼び止めた。
「あっ、織田くん!」
せっかく追い払ってやったのに、台無しじゃないか。
「な、何だよ」
「さっきの4択問題の答え……イとウで合ってますよ」
しかもチビに答えを教えてやっている。ご丁寧に微笑つきで。愛想笑いかもしれないが、愛想を振りまく相手を間違えている。
渡良瀬、あいつに愛想なんて必要ないぞ。
「あいつはいいから俺に教えてくれよ」
「そうですね。でも大丈夫ですよ、織田くんには何も教えてませんから」
「はぁ?」
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