アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3.渡良瀬先生4
-
ところが、そう上手くはいかなくなってきた。
「渡良瀬くーん、ちょっといい?」
「あっ、はい、い、今行きます! ……すみません、すぐに戻りますので」
後ろのほうの席でレポートを書いていた女子が渡良瀬を呼ぶ。渡良瀬は俺を放ってそいつのところに行ってしまう。そして2,3分後に戻ってきて、また何事もなかったかのように俺への講義を再開するんだろう。
今日はずっとこんな調子だった。おかげで俺の勉強は進まないったらありゃしない。
そうなったきっかけは、俺が勉強している姿を見たクラスの連中がひどく驚いて、「今まで安藤さんが勉強する姿なんて見たことがなかったのに」と騒ぎだしたことのようだ。俺が突然勉強しだした理由については、俺が改心したとか留年しないためだとかそんな風には思われていないらしい。誰もが「そんな安藤さんにでも勉強を教えられる渡良瀬がヤバい」という結論に達するようで、単位が少しでも危うい輩は皆渡良瀬を頼ろうとする。
ひどい手のひら返しだ。今までは必要最低限の用事以外で渡良瀬に話しかけようとする奴なんていなかったのに。
……俺も人のこと言えないか。
そうは言っても、この学校に居られるか居られないかの瀬戸際の俺を差し置いて渡良瀬に課題を教わろうとするその女子には、なんとなくもやもやした感情を覚える。
あーダメだ。やっぱ1人じゃ余計なこと考えちまう。全然集中できねぇ。
「お待たせしました」
頭を使うのを諦めペン回しに励んでいると、渡良瀬はやっと戻ってきた。
「遅い」
苛立ちのままに渡良瀬を睨みつけたが、渡良瀬は謝罪も言い訳もせずおどおどするばかりだ。その態度が余計いらただしくて、俺は舌打ちをした。
「す、すみません……。……安藤さん、怖いです…………」
「お前な、今は俺に教えてんだろ? 一番進級が危ないのは俺なんだぞ」
威張ることではないが、本当にきわどい状況なのだ。
渡良瀬は合点がいったように頷いた。
「その通りですね。……つまり安藤さんは嫉妬してくださったんですか?」
「はぁ?」
しかしその思考の飛躍ぶりに目玉が飛び出そうになる。
それから突っ込む暇も与えず、渡良瀬は頬を染めて照れ始めた。
「あの、すごく嬉しいです……。でも……そんなこと言われると期待しちゃいますから……そ、そういう発言やめてください……」
「お、お前の勘違い発言こそやめろ!」
全力で否定して、渡良瀬の頬を両方ともつねる。
「い、いいい痛いです! ごめんなさい! 安藤さんの独占欲を満たせるように尽力します!」
「てめえ、全く反省してねぇじゃねーか!」
一度手を離し、いろんな意味で赤くなっている頬を、また思いっきりつねった。今度はつねった頬を、伸びるだけ左右に引っ張っていく。
「い、痛っ、痛いですってば! 反省ひてまふよっ、やめてくらはい……」
ーーそれにしてもこいつの頬、柔らかいな。頬がよく伸びる奴ってエロいんだっけ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
14 / 49