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2.渡良瀬塾2
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翌日の放課後から、早速俺たちは勉強会を始めた。
とりあえずは、明後日に再試が迫っているネットワークAを基礎の基礎から教わることにした。……今から全力で勉強したところで、間に合う気がしないけど。
「覚えること、多いな……」
渡良瀬の教科書をチラ見して、マーカーが引いてある部分の多さに絶望感を覚える。
「あの先生の作るテスト、暗記問題ばかりなんですよ。覚えさえすればなんとかなります」
「それができねーんだっての!」
俺が声を荒げたことにビビって、渡良瀬はビクッと震えた。
何でもないことのように言う渡良瀬と既に勉強する気が失せている俺。すでに差を思い知らされている気がする。そもそも理解できないことをどう覚えろというのだろうか。
「だっ、大丈夫ですよ! 僕が責任を持って安藤さんを進級させます……から……」
「いい度胸じゃんか。俺を進級させてみろ」
「……、は、はい……」
教える側としても不安になってきたようだ。ただでさえ覇気のない口調が、どんどん萎んでいく。
「あの、とりあえず、取っ付きやすそうなネットワークトポロジーの話から……」
「頼む」
俺が悩んでいても渡良瀬の口調が弱々しくなっていくだけなので、仕方なく勉強に取り掛かる。
しかし、まともに勉強をしたことがない俺は、十分で飽きた。中学の数学とかは勉強しなくてもついていけたし、正直地頭は悪くないと思う。だが俺には努力が圧倒的に足りない。努力の素になる集中力やモチベーションもない。だから結局のところ俺はバカなのだ。
「安藤さん……? あの、大丈夫ですか……?」
机に突っ伏すと、渡良瀬が心配そうに尋ねてくる。
「やっぱ俺勉強とか無理」
「そんな……安藤さんも入試に受かったから今ここにいるんじゃないですか……」
「俺、受験勉強もまともにしたことねーもん。ここに来るまでの過程からして俺はお前とは違うの」
俺が渡良瀬を睨みつけると、渡良瀬はいつものように萎縮せず、むしろ目を輝かせた。
「やっぱり安藤さんはすごいですね! 僕なんて、結構必死に勉強してなんとか合格したんですよ」
突っ込みどころがありすぎてもはや嫌味にしか聞こえない台詞を、渡良瀬は無邪気に言ってのける。その満面の笑みは、俺の意図が全く伝わっていないことをはっきり告げていた。
まず、受験勉強をしないことは別にすごくない。世間的に言えばむしろ恥ずべきことなんじゃないか? 一般常識の欠けまくった俺にこんなこと思わせるんだから、つまり渡良瀬は頭がおかしい。頭が良い奴って大体どこか狂ってるよなぁ。それから、お前の場合はどうせ既に合格圏に入ってたくせして、勝手に必死こいてただけだろ。
いろいろ言いたいことがありすぎて、どれも言葉にならなかった。
「そうか……安藤さんは僕とは違うのか……。そうだ! 明日まで待ってください。きっと安藤さんに満足していただける勉強法を考えてきますから」
「あ~はいはい勝手にしろ」
一人でハイテンションになっている渡良瀬を横目に、俺は頼る相手を間違えたことを後悔していた。
……本当に進級できんのかな、俺。
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