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御礼参り(やや★)
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いや、もう数が多すぎて……………………。
はい、いい事し過ぎましたわ。
『御礼』だけに。
「おーい、竜ぅ~っ!客やぞォーっ」
空は、快晴。
日曜日の今日、駅に程近い商店街は、いつものように多くの人で賑わう。
その角に、ちょっと評判のたこ焼き屋がある。
昔からの常連も多く、子供から大人まで愛されている店。
竜也のバイト先。
「あー?おやっさん、俺にっすかぁ?」
竜也に、家族はいない。
途中まではいた、が、今はいない。
だから、花崎の様に生まれてからずっとではないにしても、数年だけ孤児院にいた。
でも高校に上がると、このたこ焼き屋のおやっさんが住み込みのバイトだと言って、古いアパートを用意してくれた。
もう60歳になろうかと言う、おやっさん。
竜也は、孫のようにとても世話になった。
木瀬に出会うまでは。
木瀬に出会い、竜也の人生はまた大きく変わるが、それまではおやっさんが保護者代わりだった。
そんなおやっさんの呼びかけ。
竜也は、奥でたこ焼きの仕込みをしていた姿で、いそいそと出て来た。
「ん?………………………誰、お前ら」
頭にタオルを巻き、黒Tシャツのイケメンは、店先に立つ連中を見て首を傾げる。
「嵩原ぁーっ、こないだはウチの後輩が世話になったな!青高の小山が、礼に来たったわ!!」
パツ金頭に、ギラギラした目付き。
如何にもヤンキーですが?的な男子が5、6人、たこ焼き屋の入り口に立っている。
その中央に陣取りるのが、青高の小山。
不良が多くて有名な私立青葉高校のトップ、3年小山太一だ。
喧嘩では、前回京之介がぶん殴った相工のナギさんより強いと噂される。
なかなか名の知れた、不良なのだ。
その小山が、礼に来た。
こないだ、竜也が後輩を世話したらしい。
こないだ。
「え………………………どないだ?」
いつもの事だが、記憶にない。
売られた喧嘩は、星の数。
いちいち覚えてたら、頭がパンクする。
商店街を行き交う通行人達の視線を浴びながら、竜也は真顔で聞き返す。
「はぁあ!?先週、青高の2年をボコったろうがっ!!お前っ!」
骨折者2名、打ち身・捻挫・打撲8名………諸々、計14名がヤられました。
「せやったっけ………………サッパリ覚えてへんわ」
うんうん、でしょうね。
そもそも思い出す気もない竜也の頭の中は、今日も忙しいであろうたこ焼き屋の仕込みの事でいっぱい。
ああ、早く仕込みしたい…………………。
忙しいんです、たこ焼き屋。
何せ、竜也が店に立つと客数激増。
「悪いけど、バイト中やから用ないなら帰ってや。礼なんて、わざわざいらんさかい」
「その礼ちゃうわっ!!アホかっ、お前っ!」
アホかどうかは不明だが、ちょっと抜けてるのは確か。
竜也を動かそうなんて、一筋縄ではいかない。
「えーっ、ほな何の礼やねん~っ。たこ焼きしこたま買うてくれたら、思い出したるわァ」
「なんでなっ!後輩の礼に来とんのに、お前のバイトの手助けなんかするわけないやろっ!」
「せやから、礼て言うとるやん」
「おま………………もおっ!!相工のナギが、頭抱えた言うんはホンマか!?」
ホンマです。
ナギさん、最後は発狂してましたから。
「ナギ?……………………誰それ」
「ナギも忘れとるっ!!」
それは違います。
きっと、『だるま』なら覚えてる。
「……………………………なんや、これ。小山、おちょくられとんか?」
「わからん……………………嵩原って、ぶっ飛んどるて聞いてたけど、色んな意味で強烈やな………………」
小山の後ろで、二人のやり取りを見ている青高の3年達は、竜也のキャラに唖然。
ぶっ飛んでる男、嵩原。
これが、10年も経たない内に日本一のヤクザになるのだから、世の中どう転ぶかはわからない。
「とにかく!ナギは、もうええからっ……………ツラ貸せっ、ツラァっ!」
「は?ヅラ………………?」
「ツラぢゃっ、ボケぇ!顔貸せ言うとんじゃっ!」
そうして、絡んだ方はやっぱり発狂する。
小山は竜也を指差す腕を振り回し、怒鳴り声を上げた。
そりゃもう、長い商店街に響き渡るようなでっかい声を………………………。
「商店街で叫ぶなっ!うるせぇ……………っ!!」
ドカッ……………………!!!
「ぐわぁ…………………っ!!」
「こっ、小山ぁぁ……………!!?」
小山、突然罵声と共に、脇へ蹴り食らう。
ガッシャァァァ……………ンッ!!
いきなりの不意打ちに、小山の身体は吸い込まれるように、たこ焼き屋の看板へ激突。
立て掛けられていた看板ごと、派手にぶっ飛んだ。
「ぁあっ!!ウチの看板がっ!!」
脇腹を押さえて踞る人命より、看板。
竜也は慌てて助けに向かった。
勿論、看板を。
「ってぇなァっ!!誰や、テメ………………」
誰や、テメ?
誰や。
こんな、有無も言わさぬ暴挙が出来るのは、他にはいないだろう。
「柄悪いんが店先に立っとったら、商売にならへんやろが……………竜也の邪魔すな、アホんだらァっ」
「……………………ゲッ!!」
心の底から、『ゲッ』。
青高の連中は、声を揃えて叫んだ。
ヤバいのが、来た。
「あ、あ…………………安道!!」
はい。
その無茶苦茶振りが、最近有名なんです。
出ました暴君、京之介。
この時から、私服姿もオシャレで格好良い。
見た目はモデル、中身は…………………。
「お前らまとめて柱にくくりつけて、看板にしたるぞ、コラ」
「どっちんが柄悪いねんっ!お前は、ヤクザかっ」
ヤンキー達も、思わず突っ込まずにはいられない。
ヤクザか。
ヤクザだな。
若干、17歳。
既に質の悪い堅気でした、京やん。
「もおっ、京っ!!気ィつけや!看板が壊れるやないかっ!」
そんな京之介に真っ向から挑めるのは、竜也だけ。
辛うじて壊れなかった看板を立て直し、あからさまにムッとする。
京之介は、竜也を助けたつもりなのにね。
「あ?しゃーないやん、こいつが勝手にコケたんやから」
「俺のせいか!!お前が、出し抜けに蹴飛ばして来たんやろっ!!」
「その前に声かけたったで……………『商店街で叫ぶな』て」
「ほぼ同時じゃっ、アホっ!」
ええ、同時でした。
あれを避けれたら、天才。
「竜也ぁ、腹へった。たこ焼き一つ作ってや」
しかも、もう聞いてない。
竜也のお怒り、小山のせいで終わる。
気遣い無用でしたな。
「俺、まだ仕込み中ぅー。おやっさんに頼むから、待っとき」
「ぇえ~、今日お前のたこ焼き気分なんやけど」
「それ、毎回言うてる………………俺やのうてもええやろ。大体、俺のたこ焼き気分て、何やねん」
何でしょう。
京之介、何故か竜也のたこ焼き以外食べないんです。
不器用な竜也が、たこ焼きだけは上手く作る。
それが、京之介のお気に入り。
そう言えば、大和にもたこ焼き沢山食べさせたっけ。
仲良く店に戻りながら、二人はたこ焼き談義。
「お前ら、人を無視すなぁーっ!!」
たまらず叫ぶ、小山。
話のケリはついてない。
「おい、竜也………………アレ、何しに来とん?」
蹴飛ばしといて何だが、京之介は立てた親指で差しながら、今更のように小山達の来た理由を訊ねる。
「アレ?んー、何やったっけ……………忘れたわ」
「ふぅん…………忘れる位なら、大した事ないんやな」
御礼参り。
二人にかかれば、大した事ない。
小山の訴え空しく、事は終わりを遂げる。
「お?京ちゃん、今日も男前やのー♪」
「ちぃーす、おやっさん。今日もハゲてんなぁ~」
「京っ!ハゲは言い過ぎや、まだ半分はある」
いや、どっちも言い過ぎ。
でも許される、この二人だから。
結局、御礼云々の前に、二人とまともに会話が出来るかが課題かもしれない。
多分、無理だろう。
(京やん、京ちゃん………京之介を様々な呼び方で呼んで下さいます読者様方、ありがとうございます。親しみやすくて、拝借致しました。ご本人様方は、わかって下さるかと!御礼申し上げます)
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