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見抜かれた素質(やや★)
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だから、守ってきた。
見る者が見れば、わかるから。
「……………………お前ら、地元のガキか?」
一つのたこ焼き屋。
それを囲む野次馬の目は、また違った意味合いを持ち始める。
ヤクザと、悪ガキ。
悪ガキがヤクザに勝てるとは思わないが、面白い見せ物になる。
静まり返った店先で、竜也と京之介に話しかける、木瀬と呼ばれる男。
背が高く、緩やかにクセのついた黒髪を後ろへ軽く流し、鋭い目付きとオシャレに生やした顎髭が厳つさを際立たせる。
声も渋くて、格好良い。
ザ・ヤクザ。
まさに、そんな感じ。
「地元のガキやったら、何かあんのか」
竜也の前に立ち、京之介が睨むように答える。
こう言う輩に会うと、いつも京之介は神経を張り詰めさせた。
竜也が、いるから。
どうしても、竜也の事を知られたくないと言う思いがある。
どうしても……………………。
「オイ、ガキが木瀬さんにナマ抜かすなよ」
怯みもせず前へ出て来た京之介を一蹴する、木瀬の取り巻き。
木瀬さんに。
それだけで、木瀬がどれだけの立場なのか悟ってしまうが、京之介には京之介の信念があった。
「ガキが…………………何やねん。あんたらがヤクザやからって、俺らが引かなあかん理由はないやろ」
「ぁああっ!?なんじゃとっ!」
一寸のブレもない、真っ直ぐな眼差し。
怯えも何もない京之介の態度に、たまらず声を荒げる男。
それを皮切りに、後ろにいた数人のヤクザ達も、一斉に京之介を囲み始める。
「兄ちゃんっ!悪い事は言わへんっ、さっさと謝っとき!その人らは、そんじょそこらのヤクザやない。天下の竜童会のお人らやっ」
いつの間にか、立場は変わる。
あれだけ京之介達を敵視していたたこ焼き屋のおっちゃんが、ヤクザに囲まれる京之介を見て、慌ててフォローに入った。
天下の竜童会。
竜也が現在の規模までにして、竜童会を不動のものへと確立していったが、この時も既に全国一の大きさを誇っていた。
「竜童会…………………」
「マジ……………やべーじゃん」
離れて見ていた野次馬達の囁き。
竜童会と言えば、ニュースで一度は聞いた事がある、組名。
ヤバい、本物のどストライク。
まるで波のようにそれは広がりを見せ、人々の好奇心なる目は益々熱を持つ。
「そないなもん、クソじゃ…………………ガキ相手にデカい口叩いとる時点で、ちっさいねん」
昔も今も、京之介は竜也と唯一対等にヤり合える男かもしれない。
その器は、一級品。
天下のヤクザだろうが、何人に囲まれようが、一ミリも下がる事はなかった。
「このガキがァァ………………っ!!」
祭りの夜空に響く、怒号。
自分達に臆しない京之介が、プライドをより逆撫でる。
一人のヤクザが大声を張り上げ、生意気を晒す京之介に掴みかかった。
ガシッ……………………!
緊迫感が一気に高まった瞬間に差し込む、別の動き。
黙って京之介達のやり取りを見ていた竜也が、心友へ伸びた腕を捉えたのだ。
微かに震える、男の腕。
周りにはわからなかったが、竜也の力が強すぎて、男は腕を振り払えなかった。
「ガキはどっちや…………………天下か何か知らんけど、そんだけの力あんならもっとどっしり構えや、ボケ。ええ歳こいて、笑わすな」
「竜……………………っ」
「こいつは、俺の大事なツレや。傷でも付けたら、承知せえへんぞっ!!コラァッ!!」
「……………………な……………」
思わず絶句する、竜童会組員達。
ナメたガキは、もう一人いた。
咄嗟に止めようとした京之介を尻目に、本質は暴かれる。
ガシャァァァァ…………………ン!!
「きゃあぁぁ…………………」
たこ焼き屋の看板が激しく揺れ、バキバキと鉄板の辺りが破壊される。
驚く男の腕を捉えた竜也が、そのまま男の身体を引っ張り、鉄板へ向けて頭を押さえ付けにいった。
「竜也っ!止め………………ホンマに焼けるぞっ!!」
「焼いたろうやないかァっ!ちっさい器、焼き直したるわっ……何が、ヤクザじゃっ!!笑わすなァ!」
ヤクザ達も怯む、無茶苦茶なガキ。
「何や………………………こいつ…………」
いつも、何事も京之介が前に出た訳。
言葉を失う木瀬の面前で、京之介に手を出そうとした事にキレた竜也は、段違いの暴れっぷりを見せた。
これが、怖かった。
手がつけられない。
負け知らず。
そして…………………………。
「………………………おもしれぇ」
ゾクゾクと、心を動かす。
ほくそ笑む、木瀬の顔。
普通ではないからこそ、人を惹き付ける。
見る者が見れば、その価値は知れる。
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