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慌てて携帯を取り出した健太郎の鼓膜を、ぶっきらぼうなテノールが揺らした。
『健太郎か?』
「さっ佐藤さん…」
一気に負の感情は払しょくされ、安心のあまり涙声になってしまう。気が抜けて健太郎はベンチに倒れこんだ。
『なんで泣きそうになってんだ?今、どこにいる?』
「待ち合わせ場所にいるんですけど…」
そう返答すると、数秒の沈黙と共に言いづらそうな質問が飛んできた。
『一応聞いとくけど、何公園?』
「えっえーと…烏坪上東西公園…」
スピーカーから、「あー」と納得したような溜息がもれる。
『俺、昨日のメールに東公園って書かなかった?』
「えっ!うそっ!ごっごめんなさい!」
思わず大声で謝ると、受話器から自分の声らしき言葉が割り込んでいることに気付いた。一人で首をかしげる。
「あの…佐藤さん?僕の声がそっちから聞こえる気がするんですが、気のせいでしょうか?」
『んー?』
楽しそうな声音が耳朶をくすぐる。やっぱり自分の声が聞こえてくる。健太郎が耳を澄ますと、ぽんっと頭におかれる掌にびくりと肩をはねさせた。
「場所を間違えることは既に想定済み。ちょっと心配したけどな」
くしゃくしゃとせっかく整えてきた髪の毛を乱され、頬を赤くしながら振り向くと、想像とはまったく違った元気な姿の佐藤がいた。
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