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「………楽しみすぎて早めに来ちまった。遠足に浮かれる餓鬼じゃあるまいし。」
早めに家を出てしまった佐藤は、少し困り顔で噴水前に向かっていた。
11月後半ともなると冷風の厳しさはなかなか尋常ではない。コートを着て、白いマフラーに顔をうずめてもまだ肌寒い。
まあ早く来て正解だったのだろう。こんな寒い中、健太郎を待たせるわけにはいかない。
30分前を指す腕時計から目を外し、どこか座る場所はないかと視線を滑らせる佐藤の動きが一瞬止まった。
とあるベンチに見覚えのある黒髪がうずくまっている。少しでも体を小さく縮めて暖をとろうと必死だ。
しばらく佐藤はその場を動けず、茫然とその少年を凝視した。
なんで30分前で既に凍えかけなんだよあいつ。何分前からあそこにいる。
健太郎が両手をこすり合わせて息を吐きかけると、我に戻り溜息をつきながら近寄る。
傍によると健太郎も人の気配を感じたらしく、顔をあげて佐藤を見つめた。
「え?あれなんで佐藤さん…まだ時間じゃ」
「そうだな時間じゃねえよな?なのになんでお前はいるんだ…」
「そっそれは…」
「あーもういい。手ぇ貸せ。手」
擦り合わせていた健太郎の両手を包み込むと、突き刺す冷気が佐藤の痛覚を刺激した。
「こんなになるまで…馬鹿じゃねえの」
「ごめんなさい………」
しょんぼり落ち込む健太郎。深い息を吐きながら佐藤は自分の首に巻いていたマフラーを外して、健太郎にぐるぐる巻きつける。
体温と香りがうつったマフラーに包まれた健太郎の赤くなった鼻をつまみ、佐藤はちょっとだけ低い声を出した。
「これからは時間ちょうどに来い。遅れても構わねえから」
「え!でっでも僕の基本行動は10分前行動で…」
「どこの小学生だ。んなことしたら俺は20分前に来るぜ」
「それ、何の意味もないです」
「だー、埒があかねえな…さっさと行こうぜ」
不毛な会話を早々に打ち切り、冷え切った健太郎の腕を引っ張った佐藤だった。
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