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どろどろの邪心(3/12)
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……仕方がない。
我は、清らかな水が流れる浅い川へ少年を引き連れた。
少年はキラキラと輝く水面を見ると、きゃっきゃと騒ぎ始める。
……先程まで泣いていたとは到底思えんな。
ヒトの子は下半身を包んでいた物(確か"パンツ"というものだ)を脱ぎ捨てると、川の中へ足を踏みいれた。
「あ、お魚さん…!」
「小僧、川の中は滑りやすい。気をつけろ」
「わあっ!?」
言ったそばから、これだ。
大股で川の中へ入り、少年の腕を掴み、転ばないように支えてやる。
代わりに、我が川の中で尻をつくという犠牲を払うことになった。
着物が川の水を吸い、重くなる。
水飛沫で全身がびしょ濡れだ。
「ゴメン…だいじょーぶ……?」
「……この位、何ともない」
我が呟くように言うと、少年はへにゃっと頬を緩めて笑う。
「にーちゃんって、優しいね」
「……」
それはあり得んな。
我はお前を喰らおうか迷っているのだから。
「にーちゃん、にーちゃんの名前って何?」
「馴れ馴れしく話しかけるな、ヒトの子」
「俺はねー、達希(たつき)!」
「我の話を全く聞いてないな、ヒトの子よ…」
「ね。そんで、にーちゃんの名前は?」
うるさい少年だ。
そんなに近づいてこなくとも、きちんと聞こえている。
「我に……名などない」
「お名前、ないの?……あ、じゃあ俺、つけてあげる!」
「……」
何故ヒトは、名付けたがる?
今まで何人が我に名をつけただろうか……。
「えっと、にーちゃんは髪が白いから……シロ!」
「昔、我にそう名付けた女子もいたな」
「え…っ、他の人もシロって呼んでるの?やだ。にーちゃんは俺のだよ!」
どうせ、先に見捨てるのはヒトの子等だろうに。
なのに何故、彼らは我を独占したがるのだ……。
「えっとね、この前小学校で習ったんだ。白って他に呼び方があってね、んーと…」
「……"ハク"」
「それ!にーちゃんの名前は白で"ハク"。……嫌?」
「勝手にしろ、ヒトの子」
「えへへ……白!」
「うるさい」
"シロ"に"ハク"……そう名付けたヒトの子が、前にもいた。
…今と全く同じ流れで。
まるで歴史を繰り返しているようだ。
この少年も、今までのヒトと変わりない。
期待しても無駄だ。
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