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尋ね人と待ち狐(14/22)
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──少年がこの地に身を置き、ひと月が経った。
「白、白は山の神様を見たことあるの?」
「ない。…だが、いる。見えぬが存在している。
この山が生きているのが証拠だ」
少年は、我の言っている意味を少しだけ理解したのか、「へぇー…」と呟く。
…この年頃のヒトの子は、何かと疑問を持ちやすい。
すぐに次の疑問を口にしてきた。
「…山の神様は白を苦しめてる悪い神様なの?」
「……否。山の主は正しい。
化け狐である我に対し呪いをかけたが、その呪いをある方法で断ち切ることができるようにもして下さった…」
「白の呪いってどんなの?」
「不老不死の身で1人、山の中で暮らすこと。
我は、この山の中で世のうつろいを目にしてきた」
「白…、いつから生きてるの?今何才?」
「分からぬ。二、三百年は経っただろうな」
我の発言に、少年は驚愕で目を丸くする。その後、眉を八の字にして俯いた。
「白……三百年間、ずっとひとりぼっちだったの…?」
「お前のように我の姿が見え、山に迷いこんできたヒトの子は沢山いた。
"我とずっと一緒にいる"と契った者もいた。だが、いつの日か山に訪れぬようになる」
「…え……?」
「ヒトの子は皆、我を裏切り忘れていく……」
目をふせ、囁くように言う。
……突如、それとは対に凛とした声が森の中に響いた。
「……違うっ!!」
「 ──…」
「俺は、違う!! 皆がそうでも、俺は絶対に白を裏切らない!
ずっと、ずぅーっと、白の傍にいる。
もう、白を寂しい気持ちにはさせない!」
「……達希…」
……だめだ……また…その言葉を、信じてみたくなってしまう。
今度こそは…と。
それを信じ、裏切られ、また信じて……それを繰り返し、もう何百年経った?
もう…もう、待ちたくない。
いつ来なくなるか分からぬ、尋ね人を待ちたくない…。傷つきたくない…!
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