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ちぎり、ちぎり(3/21)
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……雪で白く染まった山頂に立ち、遠ざかり小さくなっていく車というものを見下ろす。
あと数ヶ月すれば、また……。
太陽のような達希のあたたかい笑顔。それを思い浮かべると、己の頬がふっと緩むのを感じた。
──季節が巡る度、我の元へ訪れる達希。
始めて会ったときには我の半分も無かった背たけが、見る度どんどん伸びていく。
ヒトの成長は早い……。
いずれ達希も年老い、ここへ訪れることが出来なくなるだろう……寿命が尽き。
だが、それまでは必ず我の元へ通ってくれるのだろう。
あの小僧は他のヒトの子とは違う。
我は信じているのだから……達希を。
お前は我の唯一の希望の光だ──。
……何年か経ったある夏の日。
久しぶりに会った達希は少し体が引き締まっていて、肌は太陽の日に焼かれ黒くなっていた。
「白、サッカーしよ!俺、ボール持ってきたから」
「さっかー……?」
「中学校の部活、俺サッカー部に入ったんだ。白に教えてあげるよ」
達希はにっと笑うと、白色と黒色が混ざった丸いものを取り出す。
……蹴鞠みたいなものか…?
本気を出して"さっかーぼーる"を蹴ると、達希に怒られてしまった。
「ちょ、手加減してよ、白!? そんな神速ボール当たったら俺の足折れるよ!」
「ふん、やはりヒトの子はか弱いな…」
「あー、言ったな!えいっ」
汗を流して遊んだ後、木陰で体を休める。
柔らかい草の上に寝転んだ達希は、変わらない笑顔を我に見せてくれた。
新しい学校の出来事、家族のこと。
達希は我に全てを話してくれる。
「……そんでさ、俺、この前初めて女の子に告白されたんだー」
「……!そう…か……」
一瞬、胸にズキンと強い痛みが走った。
達希に相方が出来てしまったら……達希は我の元へ訪れぬようになるかもしれない。
不安に駆られ胸に手を添える。
想いを告げられた達希は、どのような答えを出したのだろう……?
聞くのが……怖い。恐ろしい。
そんな我の気持ちを知ることなく、達希は無邪気に問いかけてくる。
「ねぇ、白。俺、告白されたときどーしたと思う?」
「……知らぬ」
「気になる?あ、もしかして妬いてる?」
達希は悪戯っぽい笑みを浮かべ、我の目を狐面の穴から覗こうとする。
笑うな。何故笑う?
我は今こんなにも苦しいというのに……!
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