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別れ・想い人に懸けるもの(12/16)
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「もう、自分のせいで誰かを泣かせたくない、悲しませたくない……!」
そう思ってる…無理な話なんだけど。
……でも。
「約束したんだ、大切な人と。死ぬまで傍にいるって。
必ず帰ってくるって……!」
左手の薬指を右手でぎゅっと握りしめる。
今度こそ約束を守らなきゃ……絶対に。
「今も一人で……ひとりぼっちで、俺の帰りを待っているんだ。ずっと、ずっと……!
かーちゃん達を泣かせたくないけど、俺は自分の愛した人を裏切りたくない!」
黙って俺の話を聞いてくれてるとーちゃんと目を合わせ、真っ直ぐ見つめる。
後悔したくないんだ……自分の生き様を。
「とーちゃん前に言ってただろ、俺の名前の由来を。
"達希"の達は"とどける"、希は"希望"。
"愛する人ができたら、その人の希望の光になれるような優しい人になるんだよ"って……!」
俺は白を愛してる……だから、白の希望の光になりたいんだ…。
「とーちゃんが止めても、俺は絶対に行く。
愛する人の願いを叶える!
かーちゃん達が付けてくれた大切な名前に恥じない男になりたいから……!」
視界が涙で滲んでいるけど、決してとーちゃんから目をそらさない。
病室に暫しの静寂がおとずれる。
とーちゃんは俺の方に歩み寄ると、手を伸ばす。
あたたかい大きな手のひらが、優しく俺の頭を撫でた。
「……達希が俺達の子供で良かった。生まれてきてくれて…本当にありがとう」
「…っ、とーちゃん……」
涙腺が一気に緩み、涙やら鼻水が流れだして止まらない。
我慢せずに声を上げて泣くと、とーちゃんが苦笑いを浮かべた。
「泣いてる暇はないぞ、達希。
…いってらっしゃい、気をつけて行っといで」
「…うん……行ってきます」
とーちゃん……俺もさ、とーちゃんとかーちゃんの子供に生まれて良かったよ。
いつも迷惑ばっかかけて……最後まで親不孝な子供でごめんな。
そして…めちゃくちゃ幸せだったよ。
今まで、本当にありがとう……。
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