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【◾︎月×日
培養液中の菌の割合が前日より82.1%増加。
抗毒術式を組み込んだサンプルにおいても45.8%の増加が見られる為、単純に毒のみで殺害されたものと思われる。
マーリン本人には幼少時から抗体を打っており同じものが入手できていないため、継続した今後の調査が必要。】
「...........」
「なにを読んでるんですか?」
声をかけると、アーサーはてっきり僕が寝ていたものだと思っていたのか、びくりと肩を揺らしてゆっくり振り向きました。しかし誤魔化しても無駄だと考えたのでしょうか、いつものように溜息をついてから、
「マーリンが死んだ時の毒をな...調べさせてるんだ」
と呟きました。
....マーリンの。
「その時の俺よりもずっと若い奴にやられたらしい。....側にいなかったから、詳しいことは分からないんだが」
側にいなかったと言う時だけ、彼は少し苦しそうな顔をしました。
自分の大切な人が知らないうちに死ぬことがどういうものなのか僕には見当もつきませんでしたが、ただ彼がそれを後悔しているというのは伝わってきたのです。
アーサーは僕を連れてふらりと歩き始めました。
─マーリンは実際千年以上生きていた。俺が世話役に抜擢されたときに外見を歳の近い男の姿に変えたんだ。この方が接しやすいだろうって。
...でも明らかに普通と違う。銀色の髪がまっすぐに足首まで伸びていて、肌は屍体みたいに白かった。何より光の当たり具合で瞳の色が変わるんだ。.....お前も見れたら良かったんだが。見ものだったぞ、あれは。
それから、あいつは夜中に泣く癖があった。毎晩毎晩、いもしない誰かに向かってがたがた震えながら泣いてるんだ。
お前が生まれる前だと思うが、国境のあたりで馬鹿でかい暴動があった。それを鎮圧するために出発しようとした途端に「連れていってほしい」なんて言われてな。多分その時からだろうなあ。
そこまで語るとアーサーは足を止めました。
少し先に巨大な樹がそびえ立っています。管理人もよく話していた、世界樹....ユグドラシルというやつでしょうか。
ドリアードと呼ばれる種の人々が忙しなく働いていて、見える範囲で一番高いところでは、ごく自然な緑の髪をした若い男性が声を張り上げて指示を出しています。
突然その男性がふらりと後ろに傾きました。
「あ、」
僕は思わず叫びましたが、アーサーも彼も特に驚いた様子はありません。むしろアーサーに至っては「よく見てろよ」と笑っています。
男性は数秒の間下へ落ちていきましたが、薄く光る魔法陣のようなものが靴底に見え、間を空けずそこから鎖が勢いよく吐き出されました。そして別の丈夫な枝に巻きつき、彼を逆向きで宙吊りにしたのでした。
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