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僕の好きなひと
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僕の好きなひと。
氷崎 涼(ヒザキ リョウ)くん。
氷崎くんは、良い人だ。
僕には友達がいない。彼にそう言えば、俺が友達じゃねぇの?って言ってくれる。ほらね、良い人。友達じゃないよ、だって僕は君が好きなんだから。そう言いたいけれど、そんなの氷崎くんに言えば迷惑なのはもちろん、気持ち悪がられるのも分かってるから、そうだね、って笑う。
初めて話したのは、一年生のちょうど真ん中。夏休みが終わってから初めての登校日。周りは、宿題終わった?とか夏休みどこ行った?とかこれ、お土産!とかザワザワ騒がしかった。
僕はといえば、話す相手もいないもんだから、机の上に提出しやすいよう、夏休みすることもなくて開始一週間で終わらせた課題を並べる。うん、完璧。
ミーンミーンミンミンミンミン…
ジリジリと太陽の熱が地面を焦がす。セミの声がうるさい。公立の教室ではクーラーなんてあるのは校長室と音楽室と…なんて限られた場所だけで、僕らがいるこの教室では天井に張り付いた四つの扇風機が弱々しく回っているだけだった。
夏休みの一カ月くらい、クーラーの中で生活していた僕にとって苦痛以外の何物でもない。ぐらぐらと視界が揺れる。いや、頑張れ、僕。今日は体育館で始業式やって、課題を提出さえすれば、終わるんだから。
廊下に並べ、と先生が声を掛けて出席番号順に並ぶ。氷崎くんは僕の後ろ。そういえば、名乗ってなかった。いやあ、名前なんて呼ばれることないから、名乗るの忘れちゃったよね。僕の名前は、羽山 絢音(ハヤマ アヤネ)。女みたいな名前で僕は嫌い。
廊下に並んで、体育館に向かうを待つ。周りはやっぱりザワザワしてる。フ、と意識が飛びそうになって、慌てて足に力を入れた。大丈夫、あと3時間もすれば、終わる。
校長先生の話ってどうしてこう長いんだろう。有意義な夏休みは過ごせましたか?から始まって、今じゃ校長室のおじいちゃんが体験した戦争の話だ。興味ないって言ったら体験した人への無礼になっちゃうんだろうけど、今の僕はそれどころじゃない。本当にキツイんだって。さっきから何度か意識が飛び掛けてる。体育館の中は、教室なんかよりも数倍蒸し暑くて、扇風機なんてない。扉は全部開いているものの、真ん中の方にいる僕まで風が届くわけもなく、僕の体からは汗が止まらなかった。
ふと、その中の汗の一滴が冷たく感じる。え、と思った時には背筋がゾワ…として足に力が入らなかった。踏ん張れ!と頑張るけど、そのまま俺は後ろにひっくり返って、
…羽山?!
気絶した。
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