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ぼくは今日、オフのきみとデートする
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それから上江衿はいつもの鬼のような担当編集に戻り
會下詠慈も不毛な恋を書かされ続ける哀れな官能小説家に戻った。
彼を書いてみようと何度チャレンジしてもそれは結局失敗作になっていったが
今まで培われていた経験値がものをいい、
実際書けなくなるということは無かったが
苦悩の末に、愛の構築でもなく恋の先でもない行為として書かれるようになったナンセンスでアンニュイな変態小説は、
別世界のものとして独特の進化を遂げつつあり
天才とはよく言ったものだとつくづく自分の才能にため息を吐くのであった。
それでも未だに上江は崇め讃えているようで、
なんだか複雑な追いかけっこをしている気分だった。
とはいえ一応真面目に告白を試みた身としては
何かしらいい雰囲気になったりしてもいいものだという不満を顔で表現し続け
コンタクトを取るたびにデートしようと言い続けた甲斐があって
ようやく上江は、食事するだけですからね、とOKしてくれたのだった。
しかも彼の休みの日に!
これはもう間違いなくデートでしょ!と浮き足立つ50歳は
ダンディズム溢れるコーディネイトで待ち合わせ場所に向かうのであった。
あの天下の會下詠慈がここ最近全く遊んでいないというのも、本気の恋とは恐ろしいものだ。
一体今までどういう感じでデートだの逢瀬だのしていたのかも分からなくなるくらいには緊張していたし
妙にそわそわした気分は遥か昔
まだかんのうのかの字も知らなかった頃以来ではないだろうか。
しかし上江の私服はあのはだけた謎の着こなしの時くらいしかお目にかかれていないが一体どんな感じなのだろう。
色々思いを馳せながら待ち合わせ場所で待っていると、
ぽん、と肩に触れられ
會下は振り返った。
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