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朝、ユウは元カレとの最後の思い出の写真を破った。
床に落ちてたソレを拾い上げて手渡すと、しげしげと眺めることもなく、つーかむしろ見ねーようにして、その場でビリビリに破り捨てた。
また途方に暮れてるような顔してたから、抱き締めてキスして、押し倒した。
「もう忘れろ」
のしかかって上から覗き込みながら言うと、ユウは返事の代わりにカッと頬を赤くした。
ちょっとは「うん」って言って欲しかったけど、無理矢理言わせるもんでもねーからいいか。
それより、互いにまだ裸だったし。真っ赤になってるユウがスゲー可愛かったんで、もっかいキスして、そのままヤッた。
ユウは、昨日の誘い受けとは別人みてーに恥らってて、真っ赤な顔で目ェつむって、小さな声で啼いた。
これが酒の抜けた、本来のユウなんだろう。
オレも自分じゃ冷静なつもりだったけど、やっぱ酔ってたみてーだ。ユウの全身に残ってたキスマークと歯形の多さに、我ながらちょっと引いた。
バスタブの広さでホテルを決めたようなもんだから、風呂は男2人でもまあまあ入れる大きさだった。
パリのホテルは、古いせいもあるんだろうけど「シャワーのみ」ってとこが意外に多い。
日本とは気候が違うせいかな? 汗かかねーの?
よく分かんねぇけど、日本人の常識では理解できねーとこもあるから、事前に確認がいるみてーだ。
例えば観光地でも、トイレがビックリするくらい少なかったり。
ともかく、ぐったりになってるユウを風呂に一緒に入れてやって、中も外も、隅々まで洗った。
くてんとなってる白い裸体を見てたら、また勃起しちまったんだけど、それを見たユウに、ぶんぶんと首を振られた。
「む、無理、だよ」
って。
ドモッた後、青い顔で「壊れちゃう」とか言われたら、チクショーって感じで余計そそられて、無理矢理啼かせたくなっちまったけど、まあオレもオニじゃねーし。
「じゃあ口でやってくれよ」
そう言って、ちょっと強引だけどフェラを頼んだ。
「こんなの……オレ、壊れるハズだ……」
ユウは冗談じゃなくそう言って、恐る恐るって感じでオレのを口に含んだ。
上手いには上手かったけど、昨日のあのガッツキフェラはどうしたんだ、ってくらい控えめで、遠慮がちなしゃぶり方だった。
やっぱアレは酔ってたんかな?
でも、こっちの控えめな方が、啼かせ甲斐がありそうで好きかもな。
ベッドでゴロゴロしながら、腹減ったなーと思って時計を見ると、もう10時を過ぎていた。
「モーニングの時間、過ぎちまったな」
そう言うと、ユウも同じく腹を押さえて「カフェ行こう」つって起き上がった。
「近くに、フレッシュジュースの美味しいとこ、あるんだ」
って。
結構食い意地が張ってるらしい。
細いから、意外だった。
部屋を出る前に、帰りの飛行機のチケットを「やるよ」って渡した。
乗るヤツのいねー、余ってる方のチケット。
「一緒に日本、帰ろうぜ」
オレはそう言って、チケットをユウに押し付けた。
「え、でも……」
ユウは勿論戸惑って、困ったように眉を下げ、両手と首とをぶんぶん横に振ってたけど……。
「日本に帰って。3年越しの新婚旅行、終わらせろ」
そう言うと、ビキッと雷に打たれたみてーな顔をした。
口元がみるみる歪んで、あ、泣く、と思ったけど――そのまま唇をへの字に引き結び、ゆっくりうつむいて息を吐いた。
「……そう、だね」
引き絞るような声に気付かねーフリをして、「だろ?」と明るく言い返す。
何気なくぽんと撫でた頭は、ふわふわで柔らかかった。
おススメのカフェでメシ食ってる間、そのユウは何か考え事でもしてんのか、ぼーっとしてた。
せっかくのフレッシュジュース飲んでても、話弾まねーし。まあでもオレも、人とベラベラ喋りながら食事してー方じゃねーから、別に気にはしなかった。
ただ、店を出た後で、予定を訊かれるとは思わなかった。
「今日はどっか行くの?」
一瞬答えに詰まったのは、何も考えてなかったせいだ。
「そう、だな……」
もう観光するような気分でもねーしな、と考えて、土産がまだ全員分、揃ってなかったのを思い出した。
「土産用にワイン、買いてーな」
空港で買ったら機内持ち込みできるから便利ってのは知ってたけど、やっぱ「空港土産」よりは「パリ土産」の方がいい気がする。
つーか……。
「オレ、フランス語できねーし。一緒に買い物、付き合ってくんねー?」
ダメ元で頼むと、ユウは嬉しそうに「うんっ」と言った。
OK貰えるとは思ってなくて、嬉しい反面、ドキっとした。
仕事はいいのか、とか、飛行機のチケット明日だぞ、とか――色々言いたかったけど、言えなかった。
今日で最後だとか、思われてねぇ?
オレの小さなわだかまりをよそに、ユウは「ここ、有名らしいよ」と言って、ホテルの近くのワイン専門店に連れてってくれた。
試飲もできて、プライスカードにも日本語があって、日本人スタッフがいる店で。日本の住所に、宅配便で送ってくれる店だった。
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