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「それで」
「へ?」
暫く猫を撫でていた彼だったが、唐突にそう聞かれ、一瞬何のことかと思う。
「とぼけるでない。ワシに聞きたい事がある故あんなに必死だったのではないのか?」
「…あ、ああ!そうだった」
「忘れておったのか…」
またまた「やはり阿呆か」と言われ、返す言葉もない。
顔面死守で必死だったってのものあると思うけど…
「まあ、大方あの晩の事じゃろうが」
「うん、まあそうなんだけど。じゃあ、聞いてもいい?」
先程の事を気にしているのか、何となく今なら質問に答えてくれそうな気がした。
「内容次第じゃな」
これは…OKって事で良い、んだよね?
「えーっと…あ、じゃあさ君の名前を教えてよ」
「は? そんなもの、聞いてどうする」
「どうするって…名前ないと君のこと呼べないし、不便でしょ?
それに恩人の名前は知っておきたいし」
「……………」
あ、あれ? 何かおかしな事言ったかな俺…
無言のはずなのにそのお顔の横には「なんでお前なんかに教えなきゃならないんだ」と文字が浮かんでいるように見えるのは気のせいだと思いたい。
そろそろ、この浮かべた笑みをどうしようかとダラダラ汗を掻き始めた頃
不意に、彼の視線が逸らされた。
「名前…か。そうじゃな、八代、とでも呼べ」
「やつしろ、君?」
「君など…あー、いや今はそれが正しいんじゃったな…」
「?」
「それで良いと言うておる。それで、何が聞きたい」
「その前に、俺は久住宗介。宜しくね」
「…何じゃ、この手は」
「? 握手だけど…え、しない?」
「逆に何故すると思うた。阿呆か、お主」
「う…っ」
ま、また阿呆って言われてしまった…
差し出した手と共に、俺はがっくりとうなだれたのだった。
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